駅チカビル型納骨堂の女社長が手を染めた脱税ビジネス – livedoor



 先祖の供養に費やした金が、私腹を肥やす不正蓄財に回されていたのか−。

 大阪でビル型納骨堂「梅旧院光明殿」を運営する「光明殿」社長の山口幸子容疑者(63)=兵庫県芦屋市=らが、5年間で計約1億7千万円を脱税したとして逮捕された事件。「来て見て便利な梅旧院」のフレーズのテレビCMで関西ではおなじみだった施設に、大阪地検特捜部と大阪国税局のマルサ(査察部)による合同捜査のメスが入った。事件では、山口容疑者が金の流れを分からなくする隠蔽工作を行い、巧妙に税逃れをしていたとされる。老舗宗教法人を舞台とする施設で、なぜ脱税が可能だったのか。そこには、経営不振に陥った納骨堂事業に多額の出資をし、影響力を強めていった山口容疑者の?辣腕(らつわん)?ぶりが浮かび上がる。

テレビCMで有名

 「大切にお祀(まつ)りさせていただきます」

 着物姿で手を合わせ、視聴者に語りかける。関西に住む人なら一度は見たことがあるだろうテレビCMに登場している女性こそ、大阪地検特捜部に法人税法違反容疑で逮捕された山口幸子容疑者だ。

 都会の中にある「ビル型納骨堂」として注目を集め、テレビのバラエティー番組に出演する際には華やかなドレスや宝石を身につけて登場。インパクトのあるキャラクターは、インターネット上でも話題になった。関係者によると、兵庫県芦屋市の高級住宅街のマンションに居住。やり手経営者として知られ、プライベートでは、運転手付きの高級外車を乗り回していたという。

 「梅旧院光明殿」は、大阪市営地下鉄恵美須町駅から徒歩約5分、大阪市浪速区にある。9階建てのビルで、文字通り、各フロアに納骨堂を詰め込んだ「ビル型納骨堂」だ。

 中に入ると、銭湯やスポーツクラブのロッカーのように、金色に装飾されたボックスタイプの納骨壇や大理石製の小ぶりな墓石が並ぶ。その数、実に約5千基といい、「関西屈指のスケール」とアピールする。

 納骨壇の価格帯は20万〜800万円。約5千基の納骨壇の約90%は売約済みという。

 それぞれの墓前には、故人の遺影や、生前に好んだと思われるタバコやお菓子が供えられていた。目をつむり、静かに手を合わせる高齢女性にも出会った。

 アクセスの良さや値段の手ごろさから新たな墓参のスタイルとして浸透しつつあるという、ビル型納骨堂の一端を垣間見た気がした。だが、こうした静謐な祈りの場所を舞台に、悪質な脱税行為が展開されていたというのだ。

5年間で6億円超の所得を隠蔽

 大阪地検特捜部は10月12日、4年間で法人税約1億4300万円(起訴時に約1億5千万円)を脱税したとする法人税法違反の疑いで、山口容疑者を逮捕。その後、さらに1年間で約1900万円を脱税したとする同容疑で再逮捕した。

 トータルでみると、5年間で計約1億7千万円の脱税。国税庁が今年9月に発表した「平成28年度査察の概要」によると、直近の1年間で悪質な仮装・隠蔽で脱税したとして検察当局に告発した事案の1件当たりの脱税額は9600万円。今回の事件はこれを上回る悪質なものだった。

 さらに、手口も巧妙だった。

 捜査関係者によると、山口容疑者は、長年の知人だった上月(こうづき)啓右(けいすけ)容疑者(76)=大阪府豊中市=の会社を含む複数の取引先に対し、納骨堂の運営に関して業務委託を行ったと仮装するために虚偽の請求書を発行するよう指示。次に、請求書に記載された?業務委託費?を取引先に振り込み入金する。その後、取引先は一定の手数料を差し引いた後、残金を山口容疑者に直接、手渡ししてキックバックしていたという。

 実際に業務委託があったように装うため、請求書を作成させて取引の痕跡が残る銀行振り込みで取引先に金を渡し、キックバックの際には「足が付かない」ように現金で手渡しさせる。山口容疑者にはこうした意図があったと思われ、隠匿した法人所得は5年間で計6億3千万円に上ったという。

資金提供し影響力強まる

 山口容疑者は脱税で得た資金を個人預金や有価証券の購入などにあてたとされる。なぜ、山口容疑者は脱税し、私的流用することが可能だったのか。その背景には、梅旧院光明殿のもととなった宗教法人「梅旧院」(大阪市天王寺区)に対し、山口容疑者が影響力を強めていった歴史的経緯もあるとみられる。

 関係者らによると、梅旧院は、曹洞宗永平寺系の寺院で、延喜年間の西暦900年ごろに創建したとされる。戦火で焼けてしまったが、学問の神様として知られる菅原道真や俳人の松尾芭蕉にゆかりのある寺院として知られた。

 一方、梅旧院が当事者となった民事訴訟の記録や登記簿、関係者らの話によると、平成6(1994)年秋ごろ、梅旧院の先代住職や、山口容疑者の元夫と関係の深い不動産仲介業者らが納骨壇の販売事業を計画。7年、梅旧院の分院としてビル型納骨堂が完成した。ところが3年後には納骨壇の販売が行き詰まり、資金繰りが悪化。納骨壇の仕入れ業者への支払いも滞り、破綻寸前の状況に追い込まれた。

 そこに救いの手を差し伸べたのが山口容疑者だった。

 当時、政治家の事務所や奈良県内の健康ランドで働いていたという山口容疑者は、12年ごろから梅旧院への融資を始め、14年に納骨堂を運営する「光明殿」の社長に就任。その後も融資を続け、梅旧院光明殿の土地に山口容疑者を債権者とする抵当権が設定されるなどした。

 山口容疑者は梅旧院側に資金提供することで影響力を強め、さらに、ビル型墓地施設を関西でいち早く手掛ける「やり手」ぶりで、現在のような地位に登り詰めたといえる。

「高額料金などに注意も」

 今回事件の舞台となったビル型納骨堂は近年、交通アクセスの良さや維持管理の手軽さなどから、都市部を中心に人気が高まっている。そうした好況が脱税の舞台として悪用された可能性がある。

 墓地埋葬法に詳しい近畿大法科大学院の田近肇(たぢか・はじめ)教授(憲法学)は、その理由を「従来のようにお墓を子や孫が代々守っていく形態は(現代では)維持していくのが大変で、『孫に負担をかけたくない』『田舎まで墓参りに行くのが難しい』といった理由から、より簡素なスタイルの納骨堂のニーズが高まっている」と分析する。



 その上で、一般的に墓地の運営は「自治体が担うのに比べ、民間が墓地や納骨堂を運営すると、料金が高額になる傾向があり、金額が不透明なケースも多く、トラブルが起きやすい」と指摘。「墓地や納骨堂の運営は公益性が高いものでもあり、利用者の利便性やサービスの追求だけではなく、経営の透明性を高める必要がある」と求めている。


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