グループ会社の不祥事公表と親会社株式に関するインサイダー規制 – BLOGOS



今日は自宅近くや事務所近くのオッチャン、オバチャンとの会話がとても弾みました。老若男女を問わず、共通の話題で盛り上がるというのは本当にひさしぶりでした。あの星野リゾートが新今宮に高級リゾートを建設するということは驚きを超えて「驚愕」です。「二度漬け禁止」を誇るコテコテの南大阪人として、この想像を絶する高邁な「西成の星のや計画」に素直に拍手を送りたいと思います(ホントに信じて良いのでしょうか・・・、いや正直まだ信じられません・・・)。

(ここから本題ですが)旭化成建材社のくい打ちデータ偽装事件に関する調査を担当していた同社50代の社員に対して、データ偽装に関する不正公表の直前に同社員が保有していた親会社株式(旭化成株式)を売却したとして、SESC(証券取引等監視委員会)は63万円の課徴金処分を勧告したそうです。上場会社のグループ社員への規制強化か?と、すでに東洋経済さんでは記事が掲載されています(旭化成建材、63万円インサイダー摘発の深謀)。

本件は、SESCのHPでも紹介されているとおり、上場会社の子会社の重要事実として、バスケット条項(※)-金商法166条2項8号、が初めて適用されたという点ですね(ちなみに上場会社の重要事実に関する刑事処分、課徴金処分事例、そして子会社の事実に関する刑事処分事例ではすでに2項4号のバスケット条項を活用した事案が存在しますので、今回の件は、あくまでも子会社の重要事実に対する「課徴金勧告」にバスケット条項が適用された初めての事例・・・という意味だと思います)。

また、昨年の東洋ゴム工業株式のインサイダー取引に関する課徴金処分は親会社である東洋ゴムさんの重要事実に関するインサイダー情報が問題とされたので、こちらは2項4号事例です。

※・・・バスケット条項(インサイダー取引規制における)とは、重要事実のなかで決定事実、発生事実、売上等のほかに「当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する重要な事実であつて投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」と規定されている部分を指す。具体的な類例に当てはまらなくても、投資者の投資判断に著しい影響があれば(その意味では株価が動きそうな材料であれば)全て重要事実と見なされることになるので注意が必要である。(野村インベスター・リレーションズさんのHP用語解説より)

上記東洋経済さんの記事でも疑問視されているとおり、子会社(旭化成建材)の不祥事発生事実が親会社株式取引に関する「重要事実」に該当するかどうかは、やや微妙な気もします。会計不正事実であればまだ定量的な「重要性」の認識も可能ですが、重要とまでは言えない子会社で発生した「性能偽装」のような不祥事がどれほど親会社株式の投資判断に対して重要な影響を及ぼすのか、正直言ってフタを開けてみないとわかりませんし、また株価にどのような影響を及ぼすのか、という点についても流動的ではないかと思います(旭化成グループ全体の売上比率からみれば、旭化成建材さんは2,5%にすぎません)。

SESCとしては、不正調査を担当した社員自身がインサイダー取引にかかわったという点を重く見ているのかもしれませんが、現に旭化成社の株価は、不祥事公表によって一旦下落したものの、すぐに回復しました。このような状況において、子会社社員が(不祥事公表を)重要事実と知っていた(認識していた)といえるかどうか、実際に課徴金審判で争う価値はありそうです(なお、法解釈上は争いのあるところですが、バスケット条項を適用する場合には「軽微基準」のような概念は存在しないと私的には考えています)。

ただ、子会社における不正事実を金商法166条2項8号による「重要事実」として子会社社員にインサイダー規制の網をかける意味は、企業実務に与える影響がとても大きいように感じます。インサイダーの調査はほとんどすべて証券取引所売買審査部の監視・調査が端緒となるわけですが、このようにバスケット条項が適用されることになると、結果として証拠不十分で課徴金勧告に至らない可能性のある事案でも、上場会社に対する調査協力要請はとてもスムーズに行えます。

調査対象とされた社員は、金商法166条違反との関係では「グレー」であったとしても、調査に協力した上場会社からは「かぎりなくブラック」と認識されることになります。自社(グループ会社)の株式売買に関する自主ルールに違反していたことも判明することになりますし、かなり厳しい社内処分が科されるかもしれません。これは脅威かもしれません。

ところでSESCは2月24日にはモルフォ社の役員、従業員合計10名に対してインサイダー取引規制違反として課徴金処分の勧告を行いました(SESCのHPをご参照ください)。こちらも上場会社の従業員持株会による買付けがインサイダー取引違反として課徴金勧告の対象となる初めてのケースです。

通常、インサイダー規制違反行為は、私利私欲にかられた役職員の個人的不正としての印象が強いのですが、このモルフォ社のケースでは個々の従業員の課徴金算定金額は極めて低くなっています。ただここまで集団的なインサイダー取引への関与となりますと、取締役さんの内部統制(情報管理体制)構築義務違反まで問題になる可能性がありそうです。



インサイダー取引規制の強化方針が示された・・・とまでは申し上がるつもりはありませんが、行政による規制の運用が変化することで、対象者の提訴リスク、親会社役員の提訴リスクが高まりつつあることは間違いなさそうです。


こんな記事もよく読まれています



コメントを残す