AV女優「搾取」の実態 ギャラのうち半額超は中抜き – livedoor



 アダルトビデオ(AV)業界の闇はどこまで深いのか。

 所属女優を撮影現場へ違法に派遣したとして、AVプロダクション「クローネ」(東京都目黒区)が2月、大阪府警に労働者派遣法違反(有害業務派遣など)容疑で摘発された。大阪の路上でスカウトされた女性を自社の寮に囲い込み、週1本以上のペースで作品に出演させていたという。体を張るAV女優は高額のギャラが得られるイメージもあるが、この女性の場合、クローネやスカウト側に?中抜き?され、唯一の主演作でも正規の出演料の半額以下の15万円しか手に入らなかった。性風俗業界の関係者は「成功者は一握りしかおらず、一度足を踏み入れると簡単に抜け出せない」と指摘する。(井上浩平)

「アリバイ会社」のサポートも

 「全国から新人モデル大募集中!!」「アットホームで働きやすい雰囲気!」「モデル満足度No.1」

 クローネのホームページには、所属女優たちが豊かな胸を強調した服装で登場し、笑顔を振りまいている。確かにAVプロダクションとうたってはいるものの、世間が想像する?アンダーグラウンド?的な雰囲気は巧みに避けている。

 AV女優を「モデル」と呼び、提携している美容院やエステサロン、託児所を利用できることをアピール。AVの仕事をしていることが家族や知人に分からないようにするため、勤務先を装える「アリバイ会社」のサポートが受けられることも説明する。自社が所有するワンルームマンションの寮も完備しているとし、安心して働ける環境をとにかく強調している。

 また、AVプロダクションの仕事を紹介するあるサイトは、クローネについて、1人で出演する単体モデルなら、「月に1回のペースでAVの撮影」「売れ行き次第では契約延長やギャラのアップが望める」「お給料50万〜300万円以上」と記している。

 一見すると優良なプロダクションのようにも映るクローネ。摘発に至ったのは、大阪を舞台にした別の事件がきっかけだった。

勧誘後、マンションに囲い込み

 スカウト約200人が所属し、「アジア最大級のグループ」を自称していた大阪拠点のスカウトグループ「絆」。府警は昨年10月、勧誘した女性を違法風俗店に紹介したとして、職業安定法違反(有害業務の紹介)容疑で、所属スカウトら10人を逮捕した。

 府警によると、グループは風俗店や不動産業、美容室などを展開する会社「DIX(ディス)エンタープライズ」(大阪市浪速区)に所属。勧誘した女性を系列会社が扱うマンションに住まわせて囲い込み、傘下の風俗店で働かせるなどして「性の搾取」を繰り返していた。

 府警は、組織のトップとみられるDIX社社長の男(36)も逮捕。一連の捜査で、勧誘女性が働く風俗店からの紹介料など、すべてのカネをDIX社がいったん吸い上げるシステムが判明した。勧誘した女性が店に出勤すれば1750円、AV出演なら女性の報酬の最大40%がスカウト側に入るなどの取り決めも明らかになった。

 この事件をめぐり、府警は昨年9月に実施したDIX社などへの家宅捜索で、AVプロダクションのクローネからの入金記録を発見。絆のスカウトの男(21)の携帯電話の通話記録などから、クローネに紹介した女性を特定した。

 府警は今年2月、同法違反容疑でこのスカウトの男とDIX社のAV部門責任者の男(31)を書類送検。さらに、女性をAV制作会社に派遣したとして、労働者派遣法違反容疑で、クローネ社長の男(32)と社員の男(30)も書類送検した。

 それにしても、女性がクローネに紹介された経緯は、一体どのようなものだったのか。

下積みで脇役15本

 「風俗の仕事を紹介するよ」。昨年7月ごろ、大阪・ミナミの路上で絆グループのスカウトが20代女性に話しかけた。“夜の仕事”の経験があった女性は「他の仕事はないの?」と逆に尋ね、AVの仕事があることを知ると興味を示した。

 スカウトの男は、DIX社のAV部門責任者に「AVをやりたい女性がいる。東京のプロダクションと調整してほしい」と相談。その後、女性を連れてAV女優約50人が所属する大手プロダクションに足を運んだが、「女優の数は足りている」と断られ、系列のクローネを紹介された。

 女性はクローネの自社寮に入り、翌8〜10月のわずか3カ月間で15本のAVに出演。下積みともいえる脇役を重ね、ようやく主演した作品は女性がアナウンサーにふんしたものだった。この作品を撮影した制作会社は、35万円の出演料を支払っていたが、女性の取り分は半額以下の15万円に過ぎなかった。クローネとDIX社が10万円ずつ抜き取り、さらにDIX社から絆グループへ2万円、絆のスカウトには5万円が渡っていたのだ。

 文字通り体を張り、顔が世間にさらされるなど多くのリスクを背負ってのAV出演。それだけに、高額のギャラや芸能界入りの道が開くといった「夢」を描く女性は多いという。ただ、捜査関係者は「今回の被害女性も多くの金が稼げると思っていたようだが、あてが外れたようだ」と話す。

弁護士と相談「逃げ道」

 捜査関係者によると、クローネの社長らは書類送検されるまで、府警から何度も任意の取り調べを受けたが、容疑を認めようとしなかった。「クローネは労働者派遣法に抵触しないよう、事前に弁護士に相談して逃げ道をつくっていた」と捜査関係者は苦々しい表情で語る。

 そのきっかけは昨年6月にまでさかのぼる。芸能事務所に所属していた女性をAV撮影に派遣したとして、警視庁が同法違反容疑で大手AVプロダクション「マークスジャパン」(東京都渋谷区)の元社長らを逮捕した事件だ。同法では実際の性行為を含むAV出演を「公衆道徳上、有害な業務」として規制しているが、捜査当局が強制捜査に踏み切るのは異例のことだった。

 AV業界では所属女優を派遣する同様の手法が常態化しており、業界全体に激震が走ったとされる。クローネは弁護士と相談し、マークス社の事件から約1カ月後、所属女優との契約を見直して個人事業主とする「業務委託契約」に切り替えていた。

 調べに対し、社長らは「女優とはマネジメントの委託契約を結んでいるだけだ。クローネで雇用しておらず、派遣ではない」などと反論したという。

整形し業界去るケースも

 マークス社の事件では、「出演を強いられた」と警視庁に相談した女性らが捜査にも協力したとみられ、AV制作会社の社長らを含め50人以上も立件された。実は、府警もクローネを突破口に関連メーカーなどの立件も狙っていたが、一つの「誤算」が生じて断念せざるを得なかった。

 前出の女性には出演強要の被害があったわけではないが、クローネの待遇に不満もあったことなどから、当初、捜査に協力的な姿勢を見せていた。だが、途中で態度を一変させ、連絡がつかなくなってしまったという。

 捜査関係者は「肝心の契約内容について詳しい話を聞けなかった。実情は分からないが、女性に何らかの圧力がかかったのか…」と嘆く。

 マークス社の事件などを機に、悪質な出演勧誘や契約が社会問題にもなったAV業界。撮影現場では「本番行為」を含む違法な撮影が横行しているとみられ、暴力団との密接な関係も指摘されている。

 性風俗業界に詳しい関係者は「女性が撮影を拒否しても、プロダクションが女性に膨大な違約金を要求するのが手口。女性は繰り返し出演せざるを得ず、業界では強要が生まれやすい」と指摘。「芸能界とのつながりをちらつかせて出演させることも多いが、成功者は一握りだ」と断言する。

 ある捜査関係者も「この仕事(AV女優)を辞めても、結婚や就職に支障が出ることが考えられ、業界を去るときは整形して顔を変える人もいるそうだ」と打ち明ける。



 AV女優が「セクシータレント」と称し、メディアに登場する機会も増えている。ただ、この世界に足を踏み入れるには、相当のリスクを覚悟しなければならない。


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