東芝、メモリー事業売却を可決 臨時総会ドキュメント – 日本経済新聞



 東芝は24日、幕張メッセ(千葉市)で臨時株主総会を開き、株主に諮った3つの議案の承認を得た。6月の定時総会で報告できなかった2017年3月期決算、綱川智社長をはじめとする取締役の選任、そして半導体メモリー子会社「東芝メモリ」の米ベインキャピタルなど日米韓連合への売却が議案で、いずれも必要な株主の賛成を得て可決された。総会の流れを追った。

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■午前8時30分~「経営立て直して」

東芝の臨時株主総会会場で開場を待つ株主ら(24日午前、千葉市美浜区)
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東芝の臨時株主総会会場で開場を待つ株主ら(24日午前、千葉市美浜区)

 総会が開かれる幕張メッセでは、定刻通り8時30分から受け付けが始まった。50年近く東芝株を持つ都内在住の70代男性は「半導体メモリー子会社を売らないで済めばよかったが、やむをえない。これからどうするかが大切で、ちゃんと利益が出る会社になってほしい」と語った。

 不正会計発覚後に株式を購入したという20代後半の男性株主は「日米韓連合の半導体事業の買収がこのまま進んで、経営をうまく立て直してほしい。経営陣には説明責任を果たしてもらいたい」と述べた。

■午前8時45分~「落ち着かないと株価戻らない」

 別の女性株主は「とにかく(半導体の売却を終えて)落ち着いてほしい。でないと株価が戻らない。私のお金返ってこなくなっちゃう。(米ウエスタンデジタルは)いまだにいろいろやっている。その辺りも説明してほしい」と指摘した。

 50代の男性株主は「早く半導体子会社の売却を終えて、ひたすらがんばってほしい」と励ました。

■午前9時~「メモリー売却仕方ない」

 世田谷在住の女性株主(65)はメモリー事業の売却について「売らないでほしかったが、経営のためには仕方ない。早く落ち着いてほしい。役員が減ったことは当然の流れだ」とした。

■午前9時15分~「株主に修正動議を提案」

 社員持株会所属で、友人の株主の委任状を持って参加した東芝社員、助川博さん(59)は半導体研究開発センターでメモリシステム開発部の主幹をつとめた経歴を持つ。「経営陣はメモリー事業の売却しか発言できないので、株主に対して修正動議を提案する。社内に事業を留めておいて、米国4社などから投資をしてもらう案を出したい。そうすれば債務超過を避けられると思う。今のままでは米ウエスタンデジタルによる訴訟や独占禁止法違反などのリスクを抱えたままになるので、バックアップを残しておきたい」

 10年くらい東芝株を保有しているという都内在住の60代男性は「東芝も神戸製鋼も本質から逃げている。東芝は東日本大震災で原発の事業環境が大きく変化するなかで、ウエスチングハウスという本質から目を背けた」と指摘する。「株主への説明がない。誰のおかげで飯を食えているのか考えた方がいい」

■午前9時30分~「とにかく潰さないで」

 今回、総会に初めて参加するという埼玉県在住の男性株主(66)は「一連の経緯について役員から明確な説明を受けるために来た。売却まで紆余曲折(うよきょくせつ)があったことは、経営判断として仕方なかったと理解している。とにかく東芝を潰さないでほしい」

 千葉県在住の60代男性は「正直、怒っている。株を持ち始めたころは、こんな予定じゃなかった」とした。「政府がリスクを背負ってくれるのならできるかもしれないが、原発は一企業が関われる事業ではない」とも語った。

■午前9時45分~「社長は色々と考えて経営判断している」

 事件後に株式を購入したという東京都杉並区在住の男性株主(60)は「詳細な説明を聞きに来た。今の社長は色々と考えて経営判断していると評価している。もうウソはないと前向きに見ていて、今後はまた利益を出していくと考える。ウエスタンデジタルの問題はあるが、長い目で見て考えていきたい」と述べた。

 千葉市在住の男性株主(78)は「腹が立って仕方ない。18年前に株式を購入したが損失を被った。メモリー事業の売却が決まって少し安心したが、前の経営陣は許せない」と怒りをあらわにした。

■午前10時~総会始まる

 会場では配布資料のほか、うちわと紙パックのお茶が株主に配られた。綱川社長ら経営陣が軽く一礼しながら入場して着席を始めると、会場が少し静かに。株主らはいたって静かに経営陣の顔を見つめている。

 前方15列ぐらいまでは用意された席の端から端まで株主で満席。その後ろの方にもまばらに株主が座っている。スーツ姿の人や普段着の人、年配の男性、女性やビジネスマン風の若者など株主の構成は多様だ。

 10時すぎに臨時株主総会が始まった。綱川社長が冒頭にあいさつし「審議にはいる前におわび申し上げたく存じます」と切り出した。16年度に起きた一連の不祥事について説明したうえで「独立監査人から限定付き適正意見となったことから、決算書類を確定させるため、本総会で株主様のご承認をお願いすることとなりました」と招集の理由を説明。メモリー事業の売却契約に時間を要したこともあわせて「株主様、ステークホルダーの皆様にご心配おかけしたことを心からおわびいたします」と陳謝し、経営陣が一礼した。

■午前10時15分~決算内容について説明

 続いて綱川社長が17年3月期決算についての説明を始めた。財務担当の平田専務、監査委員長の佐藤社外取締役が文書を読み上げた。

 佐藤氏は監査法人との意見の対立について「監査委員会としては、工事引当金を計上すべきだというPwC(あらた監査法人)の意見はおかしい。PwCからは具体的にどんな情報を利用すべきだと考えているのか。いくら修正すべきか、具体的には記されず、あらたの見解を了承するのは困難だった」と説明した。

 平田専務らの説明後に、再び壇上に立った綱川社長は今後の経営方針を説明した。強調したのが、原子力子会社ウエスチングハウス(WH)の「暴走」の教訓だ。

 「厳格なリスク管理へ向け、子会社の管理監督を強化していきます」。WHに対しては親会社であるはずの東芝の監視の目が行き届かず、グループ全体の経営危機につながる巨額損失を引き起こしたとの反省があるようだ。綱川社長は改めて「今後は社会インフラを中心に成長を目指します」と誓った。壇上の全役員が神妙な面持ちだ。

■午前11時~「取締役はふさわしい資格もつ」

 綱川社長が、取締役10人の選任を株主に依頼、「取締役はいずれもふさわしい資格を持っている」と訴えた。そのうえで人数を適正な規模にし執行役の監視を適正にするため、社外取締役を過半数にすると報告した。

 綱川社長が東芝メモリをベインキャピタルに売ると報告。社長、成毛副社長ともに表情は変わらず。

 綱川社長が財務基盤回復のために複数の候補者と売却手続きをしてきたが、安定的な成長、競争当局承認をえられる蓋然性、18年3月までの売却が実行できるかの確度などを挙げて(買収目的会社の)パンゲアに東芝メモリを売却すると発言。「複数の会社を軸として交渉を重ね、パンゲアと合意に至りました」と報告した。「東芝の業績状況などを勘案し妥当であると考えている」とした。

■午前11時10分~質疑応答始まる

 質疑応答が始まった。事前に関心が多かった質問として、東芝が真っ先に回答したのが半導体メモリー事業の売却だ。「株主様はじめ、関係各者にご迷惑をおかけしました」。代表者として壇上に立った東芝メモリの成毛康雄社長が1秒ほど、会場の株主に向かって頭を下げる。売却に至った経緯や分社化による従業員の労働条件などを説明していったが、手に持った紙に目を落とし、事前に用意した文言を読み上げる無難な説明に終始した。

 成毛社長は「原子力事業への社会的責任を引き続き果たしていく」と報告した。続いて「風通しのよい企業風土改革に取り組んでいる」と報告。「上司と部下の距離感を縮め、健全な議論ができるように取り組む」とした。

 また「今後の人員削減は予定していない」としたうえで「一丸となり再生に取り組む」とし、支援を訴え代表的質疑を終了した。

■午前11時30分~「企業風土改革はどうなっている」

 15年の会計不祥事以降、幾度となく経営の混乱を繰り返してきた東芝。株主の間で根強いのは「体質」への疑念だ。「企業風土の改革はどうなっているのか」。関連質問が相次ぐ。「厳しい状況でも企業の社会的責任(CSR)は変わらない」。人事・総務担当の牛尾文昭代表執行役専務がこう答えるのが精いっぱいだった。

■午前11時45分~「売却できない場合はどうする」

 「米ウエスタンデジタル(WD)との訴訟の結果次第ではメモリーを売却できない。代替案はあるのか」。思惑通り、来年3月末までにメモリー事業の売却を完了できるかどうかについても懸念は強い。綱川社長が自ら説明に立った。

 綱川社長は「仮定の質問ですが、環境の変化に応じて様々な手段を考え、進めていることは事実です。3月末までに株式譲渡を完了して上場廃止を避ける。財務基盤を回復することに専念します」と回答した。

■午後0時15分~「神鋼問題、社長は把握しているのか」

 開会して2時間が過ぎた。ヤジや怒号が飛び交った3月末の臨時総会、6月末の定時総会とは打って変わって、今回は全般に静かな展開が続く。「神戸製鋼所の品質問題が起きているが、綱川社長はどこまで把握しているのか」

 東芝の経営問題とは直接関係ない質問も飛び出す。「神鋼から情報を取り寄せて品質問題を精査しています」と綱川社長。生産調達担当の長谷川功宏常務も「データ改ざんの疑いがあったものは、設計部門に回して安全性のチェックを徹底している。性能問題はないという結論に至った」と説明した。

■午後0時30分~「本体資本増強を」

「3号議案(東芝メモリの売却)に、修正動議を提出したい」。会場の雰囲気が引き締まったのが、メモリー事業売却への異論が出たときだ。WDとの係争や各国独占禁止法の審査などの影響で3月末までに売却完了できないリスクはなお残る。それだけに「(東芝メモリ買収へ資金を拠出する)米4社の資金を東芝本体に入れれば、債務超過を解消できる。ぜひそうしてほしい」と株主。

 しかし綱川社長は真正面から答えず「採決は後ほど原案にあわせてやりたい。そういうことでよいでしょうか」とかわした。

 企業統治に対する疑念の声も出た。「社外取締役も各界から超大物をそろえている。会計不祥事とか、原発問題を防げなかったのはなぜか」

 これに答えたのが法務担当の桜井直哉常務だ。「ガバナンスの不全は確かにあった。過去の経営トップの影響があったことは否めない」。社外取締役の監視も十分働いていなかったとした上で「会計不祥事以後の経営改革の肝として、今後も引き続き企業統治の改善を進めていく」と強調した。

 社外取締役を代表して前田氏も「社外取締役によるけん制機能は強化されてきている。意思決定の過程で関与の度合いも深まっている。残念なのは新経営体制の発足直後、(機能が十分に働いていない間に)WH問題が起きたことだ。痛恨の極みだ」と説明した。

■午後0時52分~総会終わる

 3つ全ての議案を承認決議して、総会が終わった。

■午後1時~

 総会終了後、東芝株は3年前から保有しているという横浜在住の67歳男性は「東芝の製品は好きだが、会計不祥事からの責任の所在もいまいち分からず組織が大きすぎる弊害だと感じた」と指摘した。

 横須賀在住の男性株主(67)は「数年前の総会に比べたら今回は静かだった。数字の話ばかりで、釈然としなかった。損失が11年時点で分かっていたのではという話があったが、役員は回答できないだろう」と批判した。そのうえで「来年3月までにメモリー事業の売却が完了するか心配だ。出来れば去年のうちに決まってほしかった」とした。

 東京都内在住の60代の男性株主は「今回の総会に参加して、東芝の株を売る踏ん切りがついた。役員たちの様子を見て、今後、会社を経営できるとは思えなかった」との感想を述べた。



 一方、5~6年前に株を購入したという世田谷区在住の男性株主(68)は「今回の総会を前向きに捉えている。よく粘って耐えてきたと思う」と肯定的だ。「11年の段階で損失を知っていたかという話があったが、過去のことをむし返しても仕方がない。コーポレートガバナンスをきかせて、先に進んでいってもらいたい。日本企業全体でいえることだが、従業員に元気を取り戻してもらいたい」とエールを送った。


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