仮想通貨技術で資金調達、日本がリード 中韓は消極的|マネー研究所 … – 日本経済新聞



 仮想通貨技術を使った資金調達「ICO=イニシャル・コイン・オファリング」が再び脚光を浴びている。ICOは「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行し、その対価として仮想通貨を払い込んでもらう仕組み。仮想通貨を円やドルに換金し、事業に必要な資金を調達する。国内でもICOによる資金調達が広がり、テックビューロ(大阪市)が6日まで実施したICOでは約109億円を集めた。ICOやブロックチェーンの実用化を積極的に進めるテックビューロの朝山貴生社長に仮想通貨ビジネスの未来を聞いた。

■ICO、海外が半分以上

「日本はICOで世界をリードできる」と語るテックビューロ(大阪市)社長の朝山氏

 ――企業のICOを支援するサービス『COMSA』を始めるなどICOに関して積極的に取り組んでいます。

 「今後はCOMSAを通じてICOの実例を増やしていくつもりだ。現時点で我々のところに来ている案件は海外が半分以上。国内でも、年内にも予定される案件を含め上場企業を中心に増えるだろう」

 ――日本では仮想通貨ビジネス関する法整備が他の国に比べて進んでいると言われます。金融庁は9月末、テックビューロが運営する「Zaif(ザイフ)」など11社を仮想通貨交換業者として正式に登録しました。

 「Zaifは企業が発行する『トークン』と仮想通貨や法定通貨を交換するための場を提供する目的で設立した。日本では仮想通貨交換業のルールが整備されたため、ICOで企業がトークンを渡さずに消えてしまう『詐欺コイン』の上場は難しくなった。中国や韓国などICOに消極的な国もあるなか、法整備を進めた日本はこの分野でリードできる可能性が出てきた」

 ――ICOの今後をどう見ますか。

 「テックビューロは仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンとさまざまな経済価値が結びつくことを目標にしている。ICOはそうした『トークンエコノミー』への扉を開くきっかけの一つにすぎない。数年後にブロックチェーンは自然な技術インフラとして定着し、ICOで発行されるトークンも経済の一部になっていくだろう。いずれは技術的なことを誰も気にせず、自然に使える時代が来る」

■食肉の流通経路、ブロックチェーンで管理

 ――テックビューロは国内ではブロックチェーンを導入するためのソフト「mijin(ミジン)」を通じて実用化にいち早く取り組んできました。

 「10月から日本ジビエ振興協会(長野県茅野市)と共同で、ブロックチェーンでジビエ食肉の流通経路を管理するシステムの試験運用を始めた。1月には本格運用の予定だ。2年前はブロックチェーンの商品化は難しいと指摘されたが、実用的な案件が出始めた。セキュリティーなど実用化の動きは広がり、開発サポートも含めると十分にビジネスとして大きくなっている」

 ――ビットコインの「分裂」が再び注目を集めています。テックビューロが運営する仮想通貨取引所「Zaif」では顧客にビットコインゴールドを付与しませんでした。

 「新たな通貨を生み出して収益を得ようとする手法は続かないだろう。お金が増えるように見えるがビットコインキャッシュ(BCH)で明らかになった通り、決済サービスのインフラが整わなければ先行きに限界がある。新しい通貨が本家のビットコインより大きくなるとは考えにくい」

朝山貴生
 1975年生まれ。1996年にインターネット広告配信システムで起業し、98年にシリコンバレーで法人を設立。広告のプラットフォーム開発などを手掛け、2014年6月にテックビューロを立ち上げた。16年度には経済産業省のブロックチェーン検討会委員を務めた。

【記者の目】

 ICOは仮想通貨ブームの一環としてとらえられることが多い。だが実態は、出資に応じて商品やサービスを得ることができる「購入型クラウドファンディング」に近い仕組みだ。トークンが価値を持つまでは、長い目でみる余裕が必要だ。

 監督当局の立場にたつと、規制を厳しくし過ぎれば技術革新を妨げる一方、野放しにして詐欺行為がまん延する事態は絶対に避けたい。こうした中で中国や韓国は9月、ICOによる資金調達を禁止すると発表した。その後10月には、米商品先物取引委員会(CFTC)がICOを監視対象にし、日本の金融庁もウェブサイトでトークンのリスクについて注意喚起している。

 ICO関連技術の将来性は高い評価を受け、日本では法整備が進んでいる。それでもICOが発展するための周知活動はまだ始まったばかりだ。普及は、今後出てくる案件の成否次第となるだろう。

〔日経QUICKニュース(NQN)鈴木孝太朗〕

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