【平成29年度・宅建試験】解答速報と予想合格ライン

平成29年度(2017年度)宅建試験解答速報

2017年度(平成29年度)宅建試験

2017年度(平成29年度)宅建試験の解答速報と合格ライン

10月15日宅建試験が全国で実施されました。合格発表は、平成29年11月29日(水)午前9時30分に、一般財団法人不動産適正取引推進機構の公式ページで公表されます。この記事の内容は、あくまでも筆者の独自の調査と経験による解答と予想合格ラインです。

2017年度(平成29年度)宅建試験

2017年度(平成29年度)宅建試験の解答速報

2017年10月15日時点での解答です。

2017年度宅地建物取引士資格試験の問題

2017年度(平成29年度)宅建試験の特徴

今年の問題は、若干、昨年度よりも難しいものが散見されました。ただ、難しい内容の選択肢が増えたものの、正解肢が過去に何度か出題されているようなやさしい内容となっている問題が多く、難しく感じる反面予想以上に高得点が取れている方も多かったのではないでしょうか。

これは宅建試験に限った話ではないのですが、択一試験は、「100の曖昧な知識よりも1つの正確な知識がものを言う」という受験格言が当てはまる試験内容でした。つまり、難しい内容の選択肢に惑わされることなく、やさしい内容の選択肢について正確に〇×の判断ができれば十分に合格点が取れる試験でした。

  • 2. 権利関係

権利関係は昨年同様のレベルです。形式的にも、条文の有無の問題が1問、判決文引用問題が1問出題されました。ただ、昨年まで1問あった個数問題がなくなり、全問が誤っているものか正しいものを選ばせる問題でした。

問1は代理と復代理に関する問題でした。選択肢の3は昭和51年4月9日、選択肢4は昭和44年12月18日の最高裁判例からの出題でした。後者は、過去に一度だけ出題されたことのある判例(日常家事債務について代理権があるとしたもの)が再び出題されました。また、この問題の選択肢1は、これまで出題されたことがないものでした。取消権がいわゆる単独行為という法律行為であることと代理権の範囲について法学的には少し深いものであり、真の法的センスが試される問題だったといえます。

問2の選択肢2も、宅建試験ではそれほどメジャーでない即時取得について出題されました。

問3は判決文問題でした。昭和33年7月21日の最高裁判例からの出題でした。例年通り、この判例を事前に学習していなくても、この判決文から要件と効果を抽出して丁寧に選択肢の内容と照らし合わせれば容易に正解を導き出せる内容でした。判決文問題は、法律の知識問題というよりも、判決文を正確に読めるかどうかの判読能力の有無を問うものと割り切った方がよさそうです。

問6と問9に相続の問題が出題されました。同じ年度に2問も出題されるのははじめてではないでしょうか。昨年の大法廷判決(預金等が遺産分割の対象となるとしたもの)の影響を受けたものと推測されます。ただ、その大法廷判決が出題されず、それに関連した平成17年9月8日の最高裁判例が出題されました。

問7には請負契約についての判例知識を問う問題が出題されました。選択肢2は大正元年12月20日とおそろしく古い判例でした。選択肢3は平成9月2月14日の最高裁判例からの出題でした。ただ、選択肢3は、この判例を知らなかったとしても常識レベルで誤りの内容ではないかと推測できる問題でした。

問8は、久しぶりに連帯債務からの出題でした。一人の連帯債務者に生じた事由が他の連帯債務者に影響を及ぼすか否かについての基本的な問題でした。

問10は抵当権と不動産質権の異同に関する問題でした。かなり珍しい問題でしたが、選択肢1は抵当権の被担保債権の範囲が利息2年分に限定される点がわかっていれば正解を導けるものでした。この点は、宅建試験では頻出分野なので、不動産質権を理解していなければ合格できないという意図の問題ではないと思われます。

問11と問12は借家と借地の問題でした。問11は民法上の賃貸借と借地借家法上の借地を比較させる基本的な知識問題でした。問12は借地借家法の借家の頻出分野だけを並べたやさしいものでした。選択肢4は定期借家の問題で、ほぼ毎年出題されています。しかも、その選択肢4が正解肢だったので、正答率はかなり高めとなりそうです。

問13の建物区分所有法は久しぶりにやさしい問題でした。集会の招集の要件からの問題。

問14は不動産登記法。超難問でおそらく誰もわからなかったと思います。

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  • 3. 法令上の制限

法令上の制限は例年通りの出題傾向でした。ただ、その他法令上の制限から出題され、準備不足だった方はそこで1点落としたと思われます。
問20の宅地造成等規制法の問題が昨年に引き続き、規則や施行令の詳細な技術的基準に関する知識問題でした。おそらく、ほとんどの受験者がわからなかったのではないかと思われます。今後の宅地造成等規制法の学習は、これまでのように10分で終わるものではなくなりそうです。
また、今年の法令上の制限の特徴は、ここ数年の改正点が多く出題されたことです。法令上の制限は直近のものだけでなく5年以内の改正点を学習しておくべきでしょう。

  • 4.税法・価格評定

税法は、国税から1問、地方税から1問という形式はこれまで同様でした。ただ、国税からの出題は久しぶりに所得税法から出題されました。以前、所得税法から出題されたときは正答率20%前後だったので、今回もほとんどの受験者が解けなかった問題だった思います。

地方税からは固定資産税が出題されました。ただ、最近の固定資産税の問題は、固定資産課税台帳に関する詳細な問題が多く、今年もそういった選択肢が2つあり、難問といえたでしょう。ただ、その2肢も過去に類似の問題があったのでちゃんと過去問を学習していれば正解できた問題といえます。

価格評定は地価公示法が出題されました。これは例年通りやさしめの問題でした。勉強し忘れていない限り、正解を導くのは容易だったと思われます。

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  • 5.宅地建物取引業法等

宅地建物取引業法の問題は、数問難しい内容の問題がありました。形式的にはこれまで同様に個数問題が多く、小手先のテクニックではなく選択肢ごとに正誤の判断が正確にできるだけの知識が求められています。

問29は、監督処分のかなり詳細な問題が出題されました。国土交通大臣免許業者に対する業務停止処分と内閣総理大臣の関係なども今後は整理して記憶しておく必要があります。私の著している「うかるぞ宅建士きっちり要点整理」ではさらに一任代理の媒介業者に対する監督処分の特例も記していますが、そのあたりも学習しておくと安心でしょう。

問32と問39に営業保証金と弁済業務保証金の問題が2問も出題されました。問39は昨年同様に営業保証金と弁済業務保証金を比較させる問題でした。また、供託や届出の期間を正確に暗記していないと正解を導けない問題だったので、これまで同様に正確な数字の暗記が必要です。

問43は媒介契約に関する問題で、これもいつも通り、かなり詳細な知識を問う問題でした。選択肢アは今年の改正点からの出題でした。宅地建物取引業法も直近の改正点が重要です。ウは、指定流通機構に登録したことを証する書面を依頼者に渡すという点について、「提示する」として誤りとする意地悪な問題でした。しかも、個数問題なのでおそらく正答率は低くなると思われます。

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  • 6.免除科目

免除科目の統計情報は、私がオールアバウトで毎年記事にする予想問題からびっくりするくらいズバリ的中の問題が出題されていました。オールアバウトで統計情報を確認することが重要ですね。

ただ、住宅金融支援機構法と不動産の表示に関する公正競争規約の2問は難問でしたので、おそらく多くの方はこの2問を落としたものと推測されます。

周知の通り、5点免除科目は、宅建業者に勤務して登録講習を受講する方は5問分正解しているという前提で採点されるので、非免除者は1問でも多く解答したいところですが、それほど深入りもできず、その分、権利関係で1問、宅地建物取引業法で1問余分に取るくらいの感覚の方が楽に合格点に達するものと思われます。

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平成29年度(2017年度)宅建試験の予想合格ライン

33~34点

あくまでも私個人の予測です。11月29日の合格発表までひとまず宅建のことは忘れるのがよいでしょう。

予備校等による解答速報一覧

株式会社Kenビジネススクール
住宅新報
TAC株式会社
日建学院
LEC東京リーガルマインド
資格の大原
九州不動産専門学院
株式会社クレアール

【平成29年度】宅建士試験、統計問題対策と予想問題

免除科目の統計問題は絶対に捨ててはいけない

平成29年度(2017年度)宅建試験の試験日は10月15日(日)、受験者皆さんの試験勉強は進んでいるでしょうか?

宅建業者にお勤めで登録講習を受講して修了試験に合格していないかたは、宅建試験で統計問題(正確には「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること」)を解かなければなりません。出題される内容や出題方法は例年似たり寄ったりなので、しっかりと対策していれば確実に1点取れるところです。

ここでは、2017年度(平成29年度)宅建試験に出題が予想される統計についてまとめます。宅建士試験会場でも参照して暗記に役立ててください。

平成29年度宅建士試験の免除科目の統計資料

平成29年(2017年)地価公示の概要と法人企業統計

平成29年地価公示

平成28年1月以降の1年間の地価について

1.全国平均では、全用途平均は2年連続の上昇となりました。用途別では、住宅地は昨年の下落から横ばいに転じました。商業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。工業地は昨年の横ばいから上昇転じました。

2.三大都市圏をみると、住宅地は大阪圏が昨年の上昇から横ばいとなった以外、ほぼ前年並みの小幅な上昇を示しています。商業地は名古屋圏を除き上昇基調を強めています。工業地は総じて上昇基調を継続しています。

3.地方圏をみると、地方四市では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示しています。地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小しています。

平成29年度宅建士試験の免除科目の統計資料

平成29年(2017年)地価公示の概要

【さらに詳しく調べたい方へ】
平成29年地価公示

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:平成29年地価公示(平成29年3月公表)によれば、平成28年1月以降の1年間の地価は全国平均では住宅地はわずかに下落しているものの下落幅は縮小しており、全用途平均では昨年までの下落から上昇に転じた。

答え:誤り。2年連続で上昇しています。

ーーー

平成28年建築着工統計

平成28年の新設住宅着工は、持家・貸家及び分譲住宅が増加したため、全体で増加となりました。

1.総戸数


・平成28年の新設住宅着工戸数は 967,237戸。

前年比では6.4%増となり、2年連続の増加

・新設住宅着工床面積は 78,178千平方メートル、前年比4.2%増、3年ぶりの増加。

2.利用関係別戸数


(1)持家

・平成28年の持家は 292,287戸(前年比 3.1%増、3年ぶりの増加)

(2)貸家

・平成28年の貸家は 418,543戸(前年比 10.5%増、5年連続の増加)

(3)分譲住宅

・平成28年の分譲住宅は 250,532戸(前年比 3.9%増、2年連続の増加)

マンションは114,570戸(同 0.9%減、昨年の増加から再びの減少)

一戸建住宅は133,739戸(同 8.2%増、3年ぶりの増加)

※最近は、年計(1月1日から12月31までの統計)からの出題がほとんどですが、以前は年度計(4月1日から3月31日までの統計)からも出題もありました。念のための年度計も確認しておくとよいでしょう。

平成28年度 建築着工統計

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:建築着工統計(平成29年1月公表)によれば、分譲住宅の着工戸数はマンション・一戸建住宅ともに2年連続で前年に比べ減少している。

答え:誤り。一戸建住宅は3年ぶりに増加しています。

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法人企業統計

財務省が例年9月に公表する法人企業統計年報の不動産業の経常利益と売上高から出題されています。

1.不動産業の経常利益の推移

平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の経常利益は約4兆3,000億円となっており、対前年度比7.5%減となりました。

2.不動産業の売上高の推移

平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の売上高は約39兆4,000億円となっており、対前年度比6.5%増となりました。全産業の約2.7%を占めています(全産業:1,431兆5,341億円)。

平成29年度宅建士試験用の統計資料(法人企業統計)

平成27年度法人企業統計調査

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の売上高は約39兆4,000億円と対前年度比で7.5%減少し、3年連続で減少した。

答え:誤り。売上高は増加しています。

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土地の動向

国土交通省が例年6月に公表する土地白書の中に記される土地取引件数の推移と土地利用の動向から出題されています。他の統計と同様に対前年比等の動向が正誤を分けるポイントとなっています。

1.土地取引件数等の推移

土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、平成28年の全国の土地取引件数は129万件となり、前年に比べると0.3%増となりました。

2.土地利用の動向

平成27年における我が国の国土面積は約3,780万haであり、このうち森林が約2,505万haと最も多く、それに次ぐ農地は前年より減少して450万haとなっており、これらで全国土面積の約8割を占めています。このほか、住宅地、工業用地等の宅地は約193万ha、道路は約139万ha、水面・河川・水路が約134万ha、原野等が約35万haとなっています。

【こんな問題が出題されるかも】
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問い:平成29年度版土地白書(平成29年6月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向を見ると、平成28年の全国の土地取引件数は3年連続の減少となった。

答え:誤り。0.3%増加しています。

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【平成29年度宅建試験】新判例のポイントと出題予想

2017(平成29)年度・宅建試験「出題が予想される判例」

宅建試験に出題される重要判例

いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさないとした判例。最判平成28年6月3日

最高裁判所での判断は、一審・二審と裁判所の意見が割れるほど重要な不動産取引に関する争点で審査されたものばかりです。これから不動産取引法務の専門家となる宅建試験の受験者は当然に知っておかなければならない知識です。したがって、最低でも過去5年分くらいの最高裁判例は事実と結論をしっかりと勉強しておかなければなりません。

この記事を活用して最新の判例をカバーしておきましょう。

自筆証書遺言に押印せずに花押を書いたら無効?

 自筆証書遺言にいわゆる花押を書くことは、民法968条1項の押印の要件を満たさないとした事例です(最判 平成28年6月3日 民集第70巻5号1263頁)。

宅建試験に出題される重要判例

いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさない。?平成28年6月3日最高裁判所判決。

【事実の概要】

Aは、平成15年5月6日付けで、自筆証書遺言書を作成しました。本件遺言書にはいわゆる花押が書かれていたが、印章による押印がありませんでした。

【争点】

Aは、本件遺言書に、印章による押印をせず、花押を書いていたことから、花押を書くことが民法968条1項の押印の要件を満たすか否かが争われました。

民法968条1項

「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」

【原審の判断】福岡高判平成26年10月23日

原審の福岡高裁は、花押による遺言書を有効と判断しました。その理由は、花押は、文書の作成の真正を担保する役割を担い、印章としての役割も認められており、花押を用いることによって遺言者の同一性及び真意の確保が妨げられるとはいえないからとしました。

【最高裁判所の判断】

最高裁は、原審である福岡高裁の判断を否定し、次のように判示しました。

花押を書くことは、印章による押印とは異なるから、民法968条1項の押印の要件を満たすものであると直ちにいうことはできない。

そして、民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書のほかに、押印をも要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、我が国において、印章による押印に代えて花押を書くことによって文書を完成させるという慣行ないし法意識が存するものとは認め難い。

以上によれば、花押を書くことは、印章による押印と同視することはできず、民法968条1項の押印の要件を満たさないというべきである。

【コメント】

上記の判例以外にも次のような判例があります。

遺言書自体に押印がなくても、さらには氏名すらなくても有効とする判例の流れから、本事案で高等裁判所が花押による遺言も有効であると判断することにも一理あると思われます。特に、英文での遺言の上記判例では、帰化人であるという特殊事項を考慮して押印がなくても有効である旨の判断したわけであり、本事案の花押についても、地域性などの特殊性を考慮すれば有効と判断してもよかったのではないかとも言えます。

【予想問題】

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならず、当該印を押さなかった場合は常に効力を有しない。

⇒ ×

押印していなくても有効とする判例があります。

仮差押えの時点で土地と建物が同一人所有ならば法定地上権が成立する?

地上建物に対する仮差押えが本執行に移行して強制競売手続がされた場合において、土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたが、その後に土地が第三者に譲渡された結果、その強制競売手続における差押えの時点では同一の所有者に属していなかったときの法定地上権の成否が問題となった事例です(最判平成28年12月1日 民集第70巻8号1793頁


【事実の概要】

Aは、838番6の土地と838番8の土地及びこれらの土地上にある建物を所有していました。

平成14年5月23日、本件建物と838番8の土地につき、仮差押えがされました。

平成19年3月26日、Aは、838番6の土地をXに贈与しました。

平成20年2月20日、本件建物及び838番8の土地につき、強制競売手続の開始決定による差押えがされました。本件強制競売手続は、本件仮差押えが本執行に移行してされたものです。そして、Yは、本件強制競売手続における売却により、本件建物及び838番8の土地を買い受けてその所有権を取得しました。Yは、平成21年7月29日から、本件建物、838番8の土地及び838番6の土地を占有していました。

【争 点】

本件は、838番6の土地の所有者であるXが、これを占有するYに対し、所有権に基づき、上記土地の一部の明渡し及びYが占有を開始した平成21年7月29日から上記明渡し済みまでの賃料相当損害金の支払を求めるなどしている事案です。

本件仮差押えがされた時点で、本件建物とその敷地の一部である838番6の土地が同一の所有者に属していたことによって、本件建物につき法定地上権が成立するか否かが争われました。

宅建試験に出題される重要判例

地上建物に対する仮差押えが本執行に移行して強制競売手続がされた場合において,土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたが,その後に土地が第三者に譲渡された結果,当該強制競売手続における差押えの時点では同一の所有者に属していなかったときの法定地上権の成否 最判平成28年12月1日

【原審の判断】福岡高判平成26年11月21日

原審は、本件建物につき法定地上権の成立を否定し、Xの土地明渡請求を認容し、賃料相当損害金の支払請求を一部認容すべきものとしました。

【最高裁判所の判断】

原審の判断は是認することができない。その理由は次のとおりである。

地上建物に仮差押えがされ、その後、当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において、土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたときは、その後に土地が第三者に譲渡された結果、当該強制競売手続における差押えの時点では土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったとしても、法定地上権が成立するというべきである。



【コメント】

土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなされます(民法388条 法定地上権)。また、土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至ったときも、その建物について、地上権が設定されたものとみなされます(民事執行法81条)。

なぜ、土地と建物が同一の所有者に属する場合に限定されているのでしょうか。

それは、民法上、土地と建物が同じ所有者の場合は、そこに借地権や地上権などの使用権を設定できないからです(民法179条 混同)。

本件判例は、地上建物の仮差押えの時点で土地及び地上建物が同一の所有者に属していた場合も、その仮差押えの時点では土地の使用権を設定することができず、その後に土地が第三者に譲渡されたときにも地上建物につき土地の使用権が設定されるとは限らないのであって、この場合にその仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続により買受人が取得した地上建物につき法定地上権を成立させるものとすることは、上記民事執行法81条の趣旨に沿うものであるとしています。

【予想問題】

地上建物に仮差押えがされ、その後、当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において、土地及び地上建物が当該仮差押え及び本執行の時点で同一の所有者に属していないときであっても、法定地上権が成立する。

⇒ ×

仮差押え及び本執行の時点で同一の所有者に属していない場合には法定地上権は成立しません。

亡くなった方の預金は金銭と同じ扱い?

共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるかが問題となった事案です(最大決平成28年12月19日 民集 第70巻8号2121頁)。

宅建試験に出題される重要判例

共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるとした判例。最大決平成28年12月19日

【事実の概要】

Aは、平成24年3月に死亡し、その法定相続人は、X(Aの弟であり、Aの養子)とY(Aの妹)でした。Aは、不動産(価額は合計258万1995円)のほかに、預貯金債権を有していました。

【争 点】

預金債権は遺産分割の対象となるか。

【原審の判断】大阪高判平成27年3月24日

本件預貯金は、相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないなどとした上で、抗告人が本件不動産を取得すべきものとしました。

【最高裁判所の判断】

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁その他上記見解と異なる当裁判所の判例は、いずれも変更すべきである。

【コメント】

相続財産は共同相続人の共有となります。しかし、この共有については古くからその法的性質について解釈上の争いがありました。すなわち、各共同相続人は相続財産を構成する個々の財産上に物権的な持分権を有しこの持分権を遺産分割前も単独で自由に処分できるとする見解(共有説)と、各共同相続人は相続財産全体に対し抽象的な持分を有しこの相続分の処分はできるが相続財産を構成する個別財産上には物権的な持分権はないとされ、また、債権債務も遺産分割までは不可分的に全相続人に帰属し、債務については相続財産がまず責任を負うとする見解(合有説)の対立です。預金債権等の場合、前者からは、遺産分割を待たずに各共同相続人の相続分に応じて当然に分割され、後者からは、分割されずに相続人全員に合有的に帰属し(遺産分割の対象となる)、全員が共同しなければ債務者に請求できないことになります。

これまでの判例は共有説を採用していましたが、この最高裁大法廷による決定で判例法理が変更され、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると解釈し、合有説を採用するに至りました。同決定では、預金債権は金銭と同様に遺産分割の調整に活用し得る性質があり、金銭と同じく遺産分割の対象とすべきであるとか、預金口座は給料等の入金や光熱費の引き落とし等その額は解約するまで確定しないことから遺産分割前に自らの相続分について払い戻しが可能であるとすると計算が煩雑になり調整も困難となる等を、判例変更の理由としています。

【予想問題】

相続財産である預金返還請求権などの金銭債権は、遺産分割協議が成立するまでは、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、遺産分割の対象とならない。

⇒ ×

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権および定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となります。

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民法が2017年5月26日に大改正された?

現在、わが国で使用されている民法の相続・物権・債権の3編は、1898年7月16日に施行されたものです。親族・相続の2編も同時に施行されましたが、1947年12月22日に全面改正され、1948年1月1日に施行されました。

施行された時期から想像に難くないですが、相続・物権・債権の3編はわが国に黒船が来航し、幕末の混乱を経て、不平等条約撤廃と近代国家への変貌する過程において制定されました。親族・相続の全面改正は第二次大戦後の占領下において行われています。

誤解をおそれず言えば、今回の改正によってできた民法は、外圧によらず、わが国が120年の間に培った判例法理と学説を編纂して作った初の民法といえます。

これほど重要な法律の改正なので、宅建試験においても、まだ施行されてもいないのに、改正案の段階で毎年出題されています。今後の不動産取引実務において重要な改正点が出題されているので、しっかりと対策して宅建試験に臨みたいところです。

以下、宅建試験に出題される可能性が高い点を中心に、改正民法を解説致します。

宅建試験対策・改正民法案

宅建試験に出題される改正民法問題(問1に出題されている条文の規定にあるかないかの問題)対策として、宅建試験に影響を及ぼす改正民法案の条文の解説をします。

意思無能力者の行為は無効

民法を含むいわゆる近代革命時にできた法律の多くは、意思主義という考え方を採用しています。

民法では「私的自治の原則」として基本原則の1つとされています。自らの自由な意思に基づいて契約等を行い、その有効な契約から生じる債務を引き受ける、という発想です。その前提として、そもそもその自由な意思を持つことができない人が行った表示は無効であり、その契約等から生じた債務を引き受けることもないわけです。

これまでの民法では、この考え方は当たり前のものとして、条文には書かれていませんでした。しかし、改正民法では条文に明記されることになります。

改正民法3条の2

法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

錯誤による意思表示は有効?

現行の民法では、錯誤による意思表示が要素の錯誤であって、錯誤した人に重大な過失がなかった場合には、無効を主張できると定めています(民法95条)。

改正民法では、錯誤による意思表示を有効としたうえで、表意者にその意思表示を取消権を与えました。これは、無効主張者を限定した判例法理を条文化したものです。

改正民法95条1項

意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

また、現行の民法には規定がなかった「動機の錯誤」についても条文に明記されました。

改正民法95条2項

前項第2号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

さらに、現行民法には規定されておらず、学説上も対立があった無効となった場合の第三者保護についても、条文に明記されました。

改正民法95条4項

第1項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

詐欺による意思表示の取消しは有過失の第三者に対抗できる?

現行の民法では、「詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない」と規定していました。つまり、文言上は、第三者は過失があっても保護されることになっていました。

改正民法では、第三者が保護されるためには「無過失」であることが要件となることが条文化されました。

改正民法96条2項3項

相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる(2項)。

前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない(3項)。

代理人が権限を濫用した場合は?

たとえば、特定の不動産を売却する権限を有する代理人が、その権限の範囲内で売却したがその代金を着服する目的であったような場合、これまでは民法93条(心裡留保の規定)を類推適用して、解決していました。

改正民法では、このような類推解釈をしなくても解決できるように、代理人の権限濫用の規定が新設されました。

改正民法107条

代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

 

債権は知った時から5年間で消滅時効に?

時効については、今回の改正でかなり熱い議論がされたところでもあります。多くの点で大幅な変更がありました。宅建試験に出題される可能性のあるものだけを選んで紹介します。

これまでの民法では、債権は、権利を行使することができる時から、原則として10年で時効となり、債権または所有権以外の財産権は20年で時効となり消滅する、となっていました。また、職業別の短期消滅時効についても、前近代的な制度に由来するものであり、わかりにくいという批判が多かったことから廃止されました。

改正民法では、債権の種類ごとに1~3年、5年、10年と分かれていた時効期間は、原則として「主観的起算点から5年、客観的起算点から10年」に統一されました。

宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

民法改正により債権の消滅時効の期間が改正されます。

改正民法166条1項

債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。

改正民法166条2項

債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。

生命・身体侵害の損害賠償請求権の消滅時効は?

現行民法では、生命・身体の侵害については、医療過誤や労働上の安全配慮義務違反等のように、債務不履行と不法行為の両方が問題となることがあり、どちらで主張するかで時効期間が異なる不都合が生じていました。
改正民法では、いずれによる場合も、時効期間に変わりがないように変更されました。

改正民法167条

人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1項第2号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。

改正民法724条の2

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする 。

それぞれ準用があり、わかりにくいので表でまとめました。

宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

生命・身体の損害賠償請求権の消滅時効についての改正民法まとめ

法定利率は原則3パーセントに?

現行民法では、法定利率は5パーセントとなっていました。法定利率とは、利率が契約で定められていない場合や、利息が法律の規定によって発生する場合に適用される利率のことをいいます。

市場金利が低金利で推移する現状や、フランスやドイツ等で変動金利制が採用されていること踏まえ、改正民法では、法定利率を5パーセントから3パーセントに引き下げた上で、変動金利制を導入しました。

改正民法404条

利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による(1項)。

法定利率は、年3パーセントとする(2項)。

前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年を1期とし、1期ごとに、次項の規定により変動するものとする(3項)。

 

引き渡しが遅れている途中で建物が地震で倒壊したら?

現行民法では、債務者の履行遅滞中に、その履行が当事者双方の責めによらずに不能となった場合の解決方法が定められていませんでした。ただ、判例・学説上、このような場合も債務不履行として扱っていました。
改正民法では、上記の実務的な運用が条文化されました。

改正民法416条の2

債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(1項)。

債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす(2項)。

特別損害の要件が規範的な評価に?

現行民法では、特別損害の損害賠償責任の発生要件である予見可能性について、「事情を予見し、又は予見することができたとき」と定めています(民法416条2項)。

改正民法では、本人の予見可能性だけでなく、予見すべきであったか否かという規範的な基準に改めました。

改正民法416条2項

特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

 

履行請求・免除・時効完成は他の連帯債務者に影響を与えない?

現行民法では、連帯債務について、履行請求・更改・相殺・免除・混同・時効完成を絶対的効力事由としています。絶対的効力というのは、一人の債務者との間に生じた効果が他の債務者にも及ぶものとされています。

改正民法では、上記のうち、履行請求・免除・時効完成が相対的効力事由となりました。実務上、夫婦で住宅を購入する場合の住宅ローン等において、連帯債務は活用されており、宅建試験に出題が予想されます。

ただ、現行民法にはあった民法434条・437条・439条が削除されるという改正なので、現行民法にないものとしては出題できません。

保証人に対する情報提供が義務付けられた?

現行民法では、保証人に対する情報提供に関して規定がありませんでした。

改正民法では、主債務者が、事業のために負担する債務について個人保証を委託するときに、保証人となろうとする者に対して一定の情報を提供する義務を負うことになりました。

改正民法465条の10

主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

 

瑕疵担保責任に減額請求や追完請求も?

現行民法では、売主が移転した物や権利が備えるべき性質を備えていない場合(瑕疵がある場合)、買主は売主に対して民法に定めのある一定の担保責任を負います。

改正民法では、売主が契約に基づき契約の内容に適合する物を引き渡す義務を負うことを前提に、債務不履行責任の一環として引き渡した目的物に関する担保責任を負うと整理しています。

まず、瑕疵という表現が契約不適合という表現に変わりました。

目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合)に置き換えられました。数量も含まれたことから、現行法にある数量指示売買の担保責任は契約不適合に含まれることになります。また、目的物の契約不適合を知らないことに関する買主の無過失要件(現行民法の「隠れたる」の解釈)は不要となりました。

次に、追完請求と代金減額請求を認め、これに加えて債務不履行に基づく解除損害賠償請求が可能であるとされました。

追完請求というのは修補・代物請求・不足分引渡請求をいいます。追完請求と代金減額請求については、目的物の契約不適合に関する売主の帰責事由の有無にかかわらず行使が可能とされます。それに対して、解除と損害賠償請求については一般の債務不履行の要件に従います。ということは、契約不適合に関する売主の帰責事由が要件となります。

ただし、目的物の契約不適合に関して売主でなく買主に帰責事由がある場合は、追完請求・代金減額請求は認められません。解除・損害賠償請求についても同じです。

宅建試験に出題される改正民法(条文の有無)

売主の瑕疵担保責任に関する規定が改正民法では大幅に変更となりました。

さらに、目的物の種類又は品質に関する契約不適合がある場合、買主は、契約不適合を理由とする権利を行使するためには目的物の契約不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知する必要があります。現行民法のように、期間制限内に権利行使まで行う必要はなく、契約不適合の事実を通知するのみでよくなりました。

改正民法562条

1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

改正民法566条

売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

オーナーが不動産を売却する場合の手続が変わりました

現行民法では、賃貸不動産が譲渡された場合の賃貸人たる地位の移転について、賃借人が譲受人に賃借権を対抗できるときは、「特段の事情」がない限り、賃貸人たる地位は譲渡人から譲受人に当然に移転し、賃借人が譲受人に賃貸借を対抗できないときでも、譲渡人である賃貸人と譲受人との合意により、賃借人の承諾なく賃貸人の地位を譲受人に移転することができます。また、譲受人が賃貸人たる地位を賃借人に対抗するためには、その不動産の所有権移転登記を得ておく必要があります(判例)。

改正民法では、賃借人が不動産譲受人に賃貸借を対抗できる場合は、賃貸人たる地位は、当然に譲受人に移転することが明記されます。また、賃借人が賃貸借を対抗できない場合に、譲渡人と譲受人の合意により賃借人の承諾なく賃貸人の地位を移転できる点や、譲受人が賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するには賃貸不動産の所有権の移転を要する点についても明記されます。

上記のルールにかかわらず、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人たる地位を譲渡人に留保し、その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する合意をしたときは、賃貸人の地位が譲渡人に留保されます。その結果、譲受人→譲渡人→賃借人という三者による転貸借関係が成立することになります。

改正民法605条の2

1 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する 。

3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

 


 

宅建と民法改正

上記に説明した以外にも多くの改正点があります。実際に改正された後はもちろん試験問題のすべてが改正された民法で出題されます。しかし、改正までの約2年間は、おそらくこれまで通り、問1に条文に定めがあるか否かを問う形式で改正案が出題されると予想されます。

ここ5年間の過去問の傾向では、改正民法566条の瑕疵担保責任の改正について、2012年と2013年に連続で出題されていますが、それ以外は重複せずに出題されています。したがって、この記事での出題予想は、あえて過去に出題されていないところで、不動産取引法務においてこれまで問題となっていた改正点をピックアップしました。

ぜひ、宅建試験対策として、ご活用くださいませ。

平成29年度宅建試験 ここが出る法改正

平成29年度(2017年度)宅建士試験の改正点をまとめました。法律が改正されたところは、実際の不動産取引実務で問題視されていたことなので、しっかりと改正点を整理して覚えておきましょう。

平成29年度宅建士試験用の法改正資料

営業保証金と弁済業務保証金の還付請求権者から宅建業者が除かれました。

宅地建物取引業法の改正

平成28年6月3日に、宅地建物取引業法の一部を改正する法律が公布されました。一部を除き、平成29年4月1日から施行されます。なお、その一部とは「既存の建物の取引における情報提供の充実」に関する部分で、平成30年4月1日に施行されます。
今回の宅建業法の改正は、宅建士試験にとても重要な影響を与えます。過去問の一部は答えが逆になることもあるので、過去問学習の際は注意して下さい。

媒介業者は遅滞なく依頼者に報告義務が

媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、その媒介契約の目的物である宅地や建物の売買・交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告する義務が課せられました(宅地建物取引業法 34 条の2第8項)。この規定に反する特約は、無効となります(宅地建物取引業法34 条の2第 10 項)。

予想問題

宅地建物取引業者Aが、B所有の甲宅地の売却の媒介を依頼され、Bと専任媒介契約を締結した。AがBに対して、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を5日に1回報告するという特約を締結しているのであれば、甲土地について購入の申込みがあった場合でも、AはBにその旨を遅滞なく報告する必要がない。

答え:誤り。5日に1回以上の報告を特約で定めても、遅滞なく報告する義務があります。

宅建業者に対しては重要事項説明が不要に

宅地や建物の取得者または借主となる者が宅地建物取引業者である場合における重要事項の説明については、説明を要せず、重要事項を記載した書面の交付のみで足りるようになりました(宅建業法第 35 条第6項)。

また、同様に、宅地や建物の取得者または借主となる者が宅地建物取引業者である場合おいては、営業保証金を供託した供託所等についての説明も不要となりました(宅建業法第 35 条の2関係)。

宅建士試験では頻出分野の改正だけに、とても重要です。

予想問題

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買について売主となる場合、買主が宅地建物取引業着であっても、宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明は行わなければならないが、同条の規定により交付すべき書面の交付は省略してよい。

答え:誤り。交付は省略できませんが、説明は省略することができます。

保証金の還付請求権者から宅建業者が除外された

宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をし、その取引により生じた債権に関し、営業保証金又は弁済業務保証金について弁済を受ける権利を有する者から、宅地建物取引業者が除外されました(宅建業法第 27 条第1項及び第 64 条の8第1項)。

予想問題

宅地建物取引業者Aとの取引により生じた宅地建物取引業者Bの手付金返還債権について、Bは、営業継続中のAが供託している営業保証金から、その弁済を受ける権利を有する。

答え:誤りです。宅建業者は還付請求できません。

宅地建物取引士等に対する研修が充実

宅地建物取引業保証協会は、全国の宅地建物取引業者を直接または間接の社員とする一般社団法人に対して、宅地建物取引士等に対する研修の実施に要する費用の助成をすることができるようになりました(宅建業法第 64 条の3第2項第3号関係)。

また、宅地建物取引業者を直接または間接の社員とする一般社団法人は、宅地建物取引士等がその職務に関し必要な知識及び能力を効果的かつ効率的に習得できるよう、体系的な研修を実施する努力義務が課せられました(宅建業法第 75 条の2)。

従業者名簿から住所欄が削除された

宅地建物取引業者が事務所ごとに備えるべき従業者名簿の記載事項から、住所が削除されました(宅建業法第 48 条第3項)。
従業者名簿は関係者から請求があれば閲覧させなければならないものなので、従業者のプライバシーを保護する観点から改正されました。

登録免許税の特例措置が延長

人口減少下においても土地に対する需要を喚起し、土地の流動化を通じた有効利用等の促進を図るため、土地の所有権移転登記と信託登記に係る登録免許税の特例措置が2年間(平成29年4月1日~平成31年3月31日)延長されました。

土地の所有権移転登記等に係る税率を軽減とは?

・所有権移転登記・・・2%⇒1.5%

・信託登記・・・0.4%⇒0.3%

買取再版の不動産取得税の特例が延長

既存住宅流通・リフォーム市場を活性化するため、買取再販事業者が既存住宅を買い取って一定の質の向上を図る改修工事を行い、再販売する場合に、買取再販事業者に課される不動産取得税の特例措置が2年間(平成29年4月1日~平成31年3月31日)延長されました。

買取再販で扱われる住宅の取得に係る特例措置とは?

買取再販事業者が既存住宅を買い取って一定の質の向上を図るための改修工事を行った後、その住宅を再販売する場合に、築年数に応じて以下の金額に税率を乗じた額を減額する特例措置です。

高齢者向け住宅供給促進税制が延長

高齢者が安心して暮らせる住宅ストックが不足していることから、在宅医療・介護の場となるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進するため、新築のサービス付き高齢者向け住宅に係る特例措置が2年間(平成29年4月1日~平成31年3月31日)延長されました。

サービス付き高齢者向け住宅供給促進税制とは?

【固定資産税】

5年間、税額を1/2~5/6の範囲内で市町村が条例で定める割合を軽減する制度

【不動産取得税】

家屋:課税標準から1,200万円控除/戸

土地:税額から一定額(家屋の床面積の2倍に当たる土地面積相当分の価額等に税率を乗じて得た額)が軽減される。

住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置が延長

住宅取得に係る負担の軽減、良質な住宅ストックの形成・流通の促進を図るため、住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置が3年間(平成29年4月1日~平成32年3月31日)延長されました。

住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る特例措置(登録免許税)とは?

・所有権の保存登記・・・0.4%⇒0.15%

・所有権の移転登記・・・2%⇒0.3%

・抵当権の設定登記・・・0.4%⇒0.1%

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平成27年度宅建試験 法改正と予想問題

平成29年度宅建士試験、統計問題対策と予想問題

免除科目の統計問題は絶対に捨ててはいけない

平成29年度(2017年度)宅建試験の試験日は10月15日(日)、受験者皆さんの試験勉強は進んでいるでしょうか?

宅建業者にお勤めで登録講習を受講して修了試験に合格していないかたは、宅建試験で統計問題(正確には「宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること」)を解かなければなりません。出題される内容や出題方法は例年似たり寄ったりなので、しっかりと対策していれば確実に1点取れるところです。

ここでは、2017年度(平成29年度)宅建試験に出題が予想される統計についてまとめます。宅建士試験会場でも参照して暗記に役立ててください。

平成29年度宅建士試験の免除科目の統計資料

平成29年(2017年)地価公示の概要と法人企業統計

平成29年地価公示

平成28年1月以降の1年間の地価について

1.全国平均では、全用途平均は2年連続の上昇となりました。用途別では、住宅地は昨年の下落から横ばいに転じました。商業地は2年連続の上昇となり、上昇基調を強めています。工業地は昨年の横ばいから上昇転じました。

2.三大都市圏をみると、住宅地は大阪圏が昨年の上昇から横ばいとなった以外、ほぼ前年並みの小幅な上昇を示しています。商業地は名古屋圏を除き上昇基調を強めています。工業地は総じて上昇基調を継続しています。

3.地方圏をみると、地方四市では全ての用途で三大都市圏を上回る上昇を示しています。地方圏のその他の地域においては全ての用途で下落幅が縮小しています。

平成29年度宅建士試験の免除科目の統計資料

平成29年(2017年)地価公示の概要

【さらに詳しく調べたい方へ】
平成29年地価公示

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:平成29年地価公示(平成29年3月公表)によれば、平成28年1月以降の1年間の地価は全国平均では住宅地はわずかに下落しているものの下落幅は縮小しており、全用途平均では昨年までの下落から上昇に転じた。

答え:誤り。2年連続で上昇しています。

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平成28年建築着工統計

平成28年の新設住宅着工は、持家・貸家及び分譲住宅が増加したため、全体で増加となりました。

1.総戸数


・平成28年の新設住宅着工戸数は 967,237戸。

前年比では6.4%増となり、2年連続の増加

・新設住宅着工床面積は 78,178千平方メートル、前年比4.2%増、3年ぶりの増加。

2.利用関係別戸数


(1)持家

・平成28年の持家は 292,287戸(前年比 3.1%増、3年ぶりの増加)

(2)貸家

・平成28年の貸家は 418,543戸(前年比 10.5%増、5年連続の増加)

(3)分譲住宅

・平成28年の分譲住宅は 250,532戸(前年比 3.9%増、2年連続の増加)

マンションは114,570戸(同 0.9%減、昨年の増加から再びの減少)

一戸建住宅は133,739戸(同 8.2%増、3年ぶりの増加)

※最近は、年計(1月1日から12月31までの統計)からの出題がほとんどですが、以前は年度計(4月1日から3月31日までの統計)からも出題もありました。念のための年度計も確認しておくとよいでしょう。

平成28年度 建築着工統計

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:建築着工統計(平成29年1月公表)によれば、分譲住宅の着工戸数はマンション・一戸建住宅ともに2年連続で前年に比べ減少している。

答え:誤り。一戸建住宅は3年ぶりに増加しています。

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法人企業統計

財務省が例年9月に公表する法人企業統計年報の不動産業の経常利益と売上高から出題されています。

1.不動産業の経常利益の推移

平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の経常利益は約4兆3,000億円となっており、対前年度比7.5%減となりました。

2.不動産業の売上高の推移

平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の売上高は約39兆4,000億円となっており、対前年度比6.5%増となりました。全産業の約2.7%を占めています(全産業:1,431兆5,341億円)。

平成29年度宅建士試験用の統計資料(法人企業統計)

平成27年度法人企業統計調査

【こんな問題が出題されるかも】

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問い:平成27年度法人企業統計年報(平成28年9月公表)によれば、平成27年度における不動産業の売上高は約39兆4,000億円と対前年度比で7.5%減少し、3年連続で減少した。

答え:誤り。売上高は増加しています。

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土地の動向

国土交通省が例年6月に公表する土地白書の中に記される土地取引件数の推移と土地利用の動向から出題されています。他の統計と同様に対前年比等の動向が正誤を分けるポイントとなっています。

1.土地取引件数等の推移

土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向をみると、平成28年の全国の土地取引件数は129万件となり、前年に比べると0.3%増となりました。

2.土地利用の動向

平成27年における我が国の国土面積は約3,780万haであり、このうち森林が約2,505万haと最も多く、それに次ぐ農地は前年より減少して450万haとなっており、これらで全国土面積の約8割を占めています。このほか、住宅地、工業用地等の宅地は約193万ha、道路は約139万ha、水面・河川・水路が約134万ha、原野等が約35万haとなっています。

【こんな問題が出題されるかも】
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問い:平成29年度版土地白書(平成29年6月公表)によれば、土地取引について、売買による所有権の移転登記の件数でその動向を見ると、平成28年の全国の土地取引件数は3年連続の減少となった。

答え:誤り。0.3%増加しています。

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