<前編>山崎 亮 | 仕事とは?(就職ジャーナル)

仕事とは?
<前編>山崎 亮

やまざき・りょう●1973年、愛知県生まれ。大阪府立大学農学部卒業(緑地計画工学専攻)。在学中にメルボルン工科大学環境デザイン学部(ランドスケープアーキテクチュア専攻)にてジョン・バージェス氏に師事。大阪府立大学大学院(地域生態工学専攻)修了後、 SEN環境計画室勤務。2005年に「studio-L」を設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。町づくりのワークショップ、住民参加型の総合計画作り、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトを多く手がける。現在は、東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)、慶應義塾大学特別招聘(しょうへい)教授も務める。

■ デザインするのは「人と人がつながる仕組み」

-山崎さんはこれまでに「第四次島根県隠岐郡海士町総合振興計画」(島根県隠岐郡海士町)や「鹿児島県鹿児島市マルヤガーデンズ」(鹿児島県鹿児島市)など約300を超えるコミュニティデザインのプロジェクトを手がけてこられたとか。ご著書からそれぞれのプロジェクトの面白さは伝わってきたのですが、正直なところ、「コミュニティデザイナー」の仕事とは何かが、はっきりとはわからなくて…。

わかりにくいですよね(笑)。皆さんにはよく「地域の人が地域の課題を自分たちで解決するために、人と人がつながる仕組みをデザインする仕事です」とご説明しています。訪れた町や島の人たちと一緒に仕事をしているうちに「集会所を作ってほしい」「空間設計のアイデアが欲しい」と頼まれるようなこともありますが、基本的にモノは作りません。地域の総合計画をそこに住む人と行政が一緒になって作るための橋渡しをしたり、地方の新聞社が新社屋建設に当たって市民が集う場所を作りたいと立ち上げたプロジェクトで、地元の人たちと新聞社の社員、建築家などで構成するワークショップを運営したりと、地域が元気になるためのお手伝いをするのが僕たちの仕事です。

訪れた先では、ワークショップなどを通して地域の人たちと一緒に課題の解決策を見つけていきます。先行事例や、課題に関連した基本的な専門知識など皆さん自身が考えるための材料は提示しますが、あらかじめ用意した答えを提示して「こうすればいいですよ」というようなことは言いません。また、皆さんの発想が受け身にならないよう、「何が欲しいか」ではなく「何をしたいか」を聞きます。すると、回を重ねるうちに、僕が口をはさまなくても地域の人たち同士で活発に議論できるようになり、ワークショップに参加する前はつながりのなかった人たちがつながって、新たなコミュニティが生まれる。この仕事の最終的な目標はそこです。

■ やりたい仕事がわからないまま、設計事務所に就職

-大学ではランドスケープ(景観)デザインを学び、卒業後は設計事務所に勤務されていたんですよね。

大学の学部は農学部で、もともとは中学時代の先生から「将来性がある」と聞いたバイオテクノロジーについて学ぼうと入ったんです。ところが、僕が進んだ学科ではバイオの授業がないと発覚。「なんとなくカッコよさそう」という理由でランドスケープを専攻したのですが、勉強してみると面白くて、関連の分野を学んでいくうちに建築にも強い関心を持つようになりました。当時はとにかくデザイン性の高い建物を造ることに憧れていましたね。

転機となったのは、大学3年生の時に起きた阪神淡路大震災です。被災地で崩れ落ちた建物を前に、がれきにはさまって犠牲になった方たちに思いをはせ、建築というモノが人の命を奪うこともあるという事実にがくぜんとしました。一方で、住む家を失った人たちが公園に集まって助け合い、炊き出しをしながら励まし合っている姿を見て気持ちを救われたことから、「モノを作るよりも、デザインの力を生かして人と人のつながりをつくるような何かをしたい」と考えるようになったんです。ただ、それが何なのか具体的な職種名が思い当たらず、モヤモヤした気持ちのまま建築とランドスケープを手がける設計事務所に就職しました。そこの上司が公共建築の設計において、地域の人たちの意見を聞くワークショップを重視する人だったんです。後の僕にとってはラッキーだったと言えますが、実のところ、当初はワークショップの仕事がイヤだったんですよ。

-どうしてですか?

そのころやっていたワークショップは地元の人たちが主体的に考える場をつくるというよりは、どんな建物や空間をつくるのか、住民の合意を得ることが目的になっているところがあり、「ごっこ」っぽいと思っていました。いろいろな人の意見を聞けば聞くほど、造形が主張のないものになっていくことも残念でならなかった。でも、数年後、建築物が完成するころになると、考えが変わりました。ワークショップをやって造った建築物は、そうでない建築物に比べて参加した住民が愛着を持ってくれ、何度も訪れてくれたんです。

ワークショップの仕事も、場数を踏むにつれ、楽しくなっていきました。あらかじめ用意した案を見せて意見を聞くと、最初は「ここがダメ」「あそこがイヤ」とあら探し大会のようになりがちなのですが、「その課題を解決するにはどうすれば良いと思いますか?」と相手の主体性を引き出すような問いかけをすると、僕たちが思いつかないようなアイデアが出たりもします。また、議論が進むにつれメンバーの交流も深まり、「山崎さんのおかげで地域に知り合いができて、生活が変わった」とお礼を言われることもありました。自分が何かをすることによって、地域の人たちに笑顔が生まれるのは、やはりうれしかったですね。

主体的に考え、行動する人たちで構成されたコミュニティをつくることこそが、図書館や公園を造ること以上に、地域を元気にするのではないか。そう考えて、設計事務所時代の後期はコミュニティづくりに力を入れて取り組みました。例えば、公園の遊び場造りを依頼されたら、同時に完成した遊び場で子どもたちと一緒に遊ぶ「プレイリーダー」を養成するというように。ただ、設計事務所でコミュニティづくりばかりやるというわけにもいかず、2005年に独立。プライベートで地域リサーチのフィールドワークを一緒にやっていた仲間と「studio-L」を設立しました。

■ 独立1年目の年収は35万円。それでも、毎日が楽しかった

-山崎さんの活動によって、今でこそ「コミュニティデザイン」という言葉を知る人も増えましたが、独立当時は事業内容の説明も難しかったのでは?

「人と人をつなぐ会社です」と言っていましたが、いかにも怪しそうですよね(笑)。建築の設計者がなぜモノを作らないんだと言われましたし、独立前から周囲には「もうかるわけがない」と忠告されていました。実際、1年目の年収は35万円。しかも、設計の図面を書く手伝いで得たもので、コミュニティデザインの仕事の収入はゼロ。とにかく実績を作らなければと最初は無報酬で活動していたからです。活動の様子は写真に撮って冊子にし、「これが僕たちの仕事です」と見せられるようにしました。そのうちに各地の自治体から関心を持ってもらえるようになって、独立3年目くらいからコミュニティデザインの仕事だけで何とかやっていけるようになりました。

独立当初は結婚したばかりでしたし、「どうやって食べていくんだ」と周囲からは心配されました。僕自身も、不安がまったくなかったわけではありません。だけど、仲間や家族とはよく「楽しかったよね」とあのころのことを振り返ります。めっちゃ貧乏だったけど、それを乗り越えるにはどうすればいいかをみんなで考えるのがすごく面白かった。何より、四六時中やりたいことをやれているという充実感がありました。

後編ではコミュニティデザインの仕事に必要な資質・スキルや、今後の活動についてお話しいただきます。

→次回へ続く

(後編 10月18日更新予定)

■ INFORMATION

若者向けに、コミュニティデザインの仕事についてわかりやすく書かれた『ふるさとを元気にする仕事』(筑摩書房/920円+税)。コミュニティデザインの基本知識やプロジェクトの事例が丁寧に説明されている。山崎さんの学生時代の過ごし方や、現在の仕事の進め方、ワーキングスタイルについても具体的につづられており、キャリアや働き方について考える上でのヒントもいっぱいだ。

取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康

生活家電編 | 業界トレンドNEWS(就職ジャーナル)

業界トレンドNEWS
生活家電編

■ 海外市場に向けた「現地化」の成否と、先端技術を生かした新製品の開発が成長のカギ

生活家電とは、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどのように暮らしの中で使われている家電製品のこと。白い色をした商品が多かったため、「白物(しろもの)家電」と呼ばれることもある。冷蔵庫や洗濯機などの大型生活家電は、パナソニック、三菱電機、東芝、日立製作所、シャープといった「総合電機メーカー」が得意とする分野だ。一方、扇風機や掃除機などの小型家電の分野では、ツインバード、山善やアイリスオーヤマといった中小メーカーが存在感を放っている。またグローバル市場では、ハイアールや美的集団(ともに中国)、ワールプール・コーポレーション(アメリカ)、LGエレクトロニクスやサムスン電子(ともに韓国)、エレクトロラックス(スウェーデン)などが広く知られた存在だ。

2016年、国内の生活家電業界では大きな変化が起きた。6月に、東芝の生活家電部門であった東芝ライフスタイルが美的集団の子会社となり、8月にはシャープが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の子会社となった。白物家電メーカーの代表格であった国内メーカーが外資系企業の傘下に入ったことは、内外に大きな衝撃を与えた。だが、シャープ・東芝ライフスタイルともに、社名やブランドを維持しつつ事業継続する方針。そのため、テレビCMや家電量販店の売り場などを見る限りでは、今のところ大きな変化は出ていない。

一般社団法人日本電機工業会(JEMA)が発表した「2017年度 電気機器の生産見通し」によると、2015年度における生活家電の国内出荷額は2兆2480億円。2016年度の実績見込みは2兆2948億円だった。一方、2017年度は2兆3037億円の見込み。国内の緩やかな景気回復に支えられ、2017年度もほぼ例年並みを維持できそうだ。ただし、国内市場の先行きには不安が残る。総務省「平成26年全国消費実態調査」によると、国内の冷蔵庫普及率は98.9パーセント、洗濯機は98.8パーセントに達しており、売り上げのほとんどは買い替え需要に支えられている状況だ。また、日本では人口減少が予測されており、今後は大きな成長が期待しづらいからだ。

そこで各社は、中国、東南アジア、インドなどの海外市場の開拓に力を入れている。新興国では、生活家電の普及率が低いところが少なくない。さらに、経済発展に伴って生活水準が向上しているため、生活家電の新規購入需要が期待できるからだ。ただし、国内で生産された高性能・多機能な商品をそのまま輸出しても、新興国で受け入れられる可能性は低い。いわゆる「ローカライズ」(ある国で生まれた製品を、外国でも通用するよう修正すること)を施し、現地で望まれる価格帯や、その生活習慣に根ざした製品を開発することが重要となる。例えばパナソニックは、インド市場での売り上げ拡大を目指し、カレーの汚れを落とす専用ボタン付きの洗濯機を発売している(下記ニュース参照)。

人工知能(AI)、ロボット技術、IoT(下記キーワード参照)といった先端技術の波は、生活家電業界にも押し寄せてきている。例えば、「中身をドアのスクリーン上で管理し、自動的に買い物リストを提案する冷蔵庫」や、「手元にある食材やカロリーなどの条件を入れると、それに合ったレシピを提案する電子レンジ」といった商品が登場中だ。また、ベンチャー企業のセブン・ドリーマーズ・ランドロイドは2017年5月、全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」を発売。AI・ロボット・IoTの技術を組み合わせ、洗濯物の折り畳みを自動化するという新たな市場を切り開いた(下記ニュース参照)。このように先端技術でイノベーションを起こそうとする動きは、今後も加速するだろう。

従来の「生活家電」という枠組みを超える製品を生み出すため、新たな仕組みを導入しようとする企業もある。例えば、パナソニックは2016年5月、社内での新規事業案公募や、社外の企業・研究機関・個人などとの協業などを並行して進める取り組み「Game Changer Catapult(ゲームチェンジャーカタパルト)」をスタート。このプロジェクトでは、開発プロセスまで社外に公開する「オープンイノベーション」(下記キーワード参照)のスタイルを採用しており、従来は「自前主義」(下記キーワード参照)の傾向が強かった国内企業の方針とは一線を画している。社会が大きく変わる中、社内外の知恵・知識を取り込んで新たな価値を提供しようとする試みは、今後も盛んに行われるだろう。

■ 生活家電業界志望者が知っておきたいキーワード

IoT
Internet of Thingsの略称で、「モノのインターネット」と訳される。身の回りのさまざまなモノをインターネットに接続することで、新たな活用方法を模索することを指す。「スマートフォンを使って生活家電を操作する」「献立やレシピなどをインターネットからダウンロードする」といった機能を持つ製品が、続々登場している。

オープンイノベーション
社外から技術やアイデアを取り込むことで、新たな価値を作り出す仕組みのこと。市場の成熟化や顧客ニーズの多様化などが進む中で革新的な製品を素早く生み出すためには、自社内の経営資源だけでは不十分。そこで、他の企業や研究機関などと協業することが今後の企業には強く求められている。

自前主義
自社の技術やスタッフだけを使い、製品やサービスを生み出そうとする考え方。従来の日本企業では、こうした態度を取るところが比較的多かった。しかし、限られた知識・技術や労働力しか使えないため、他社との開発競争に後れを取る危険性が大きいのがデメリットだ。

スマート家電
高度なデジタル技術を活用し、エコ・健康・安心といった新たな付加価値を加えた家電製品を指して言うことがある。インターネットに接続して使われる、スマートフォンやタブレット端末で遠隔操作できる、利用者の好みに応じて細かな設定ができるなどの特徴を持つ。

■ このニュースだけは要チェック<各社は製品のローカライズに注力>

・パナソニックがインドで、衣類に付着したカレーのシミを落とせる「カレーコース」付きの全自動洗濯機を発売。節水を重視した日本向けの製品ではカレーの汚れが落ちづらいという現地の声に対応し、最適な水流や洗濯時間を研究して投入した。ローカライズの好事例として注目したい。(2017年2月17日)

・ベンチャー企業のセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社が、全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」の限定予約を開始。画像解析技術を使って洗濯物の種類を見分け、AIとロボット技術を組み合わせて自動折りたたみを実現した。インターネットと接続してAIをアップデートするなど、新機能・新サービスの追加も検討中だという。(2017年5月30日)

■ この業界とも深いつながりが<スマートフォン関連業界との協業がさらに進むか?>

携帯電話キャリア
携帯電話キャリアと協力し、スマート家電などの開発を行うケースが増加

家電量販店
販売チャネルとして深い関係。ただし、家電量販店側からの値下げ圧力も強い

住宅メーカー
エネルギー消費量の小さい家を実現するため、省エネ家電の開発を進める

■ この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門未来デザイン・ラボ コンサルタント
橘田尚明氏

東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了。新規事業テーマ構築支援、未来洞察のコンサルティングを中心に活動。米国公認会計士。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

<後編>【株式会社明電舎】社員インタビュー | 理系のシゴトバ(就職ジャーナル)

理系のシゴトバ
<後編>【株式会社明電舎】社員インタビュー

-基本情報-
【本社所在地】東京都品川区
【支社・支店】大阪、名古屋、札幌、仙台、大宮(埼玉県)、千葉、横浜、金沢(石川県)、広島、高松(徳島県)、福岡
【事業所・工場・研究所】沼津(静岡県)、総合研究所(東京都品川区)、太田(群馬県)、名古屋
【従業員数】8474名(2017年3月31日現在)
【事業内容】社会システム事業、産業システム事業、エンジニアリング事業を展開。社会システム事業では、変電・配電、発電に関する各種電気機器の製造・販売およびソリューションサービスを提供。産業システム事業では自動車試験装置のほか、電気自動車やエレベーター向けにモーターやインバーターなどの電動力応用製品の製造・販売を展開。エンジニアリング事業では、納入した機器の長寿命化や省エネルギー対策の提案などを行っている。
-明電舎のすごいトコロ-
明電舎は日本の電気技術の黎明期である1901年に三相誘導電動機(モーター)を開発して以来、モートル(モーター)の明電として世の中を支えてきた。モーターおよびその制御技術は、現在の明電舎のさまざまな事業分野の根源として展開されている。例えば、三菱自動車のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」に明電舎のモーターとインバーターが、国内外の有名高層ビルのエレベーター用モーターにも明電舎の製品が数多く使用されている。そのほか、国内新幹線すべての路線のどこかに明電舎の製品が納入されているなど、明電舎の技術は人々の生活に直結するインフラを支えている。
前編では【明電舎 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部】のシゴトバを紹介しました。
後編では吉田健人さんに入社の決め手やシゴトバの魅力、これから就活を迎える学生さんへのアドバイスなど、お話しいただきます。

■ <後編>「明電舎」で活躍する社員にインタビュー

-学生時代の専攻を教えてください

慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻を修了し、2015年に明電舎に入社しました。大学、大学院では複数の音源が混じり合った状態から、各音源を推測してそれぞれの音響信号を分離するという、音源分離に関する研究に従事していました。研究テーマに音を選んだのは、音楽が好きだったからです。趣味はギターを弾くこと。バンド活動もしています。研究でも、自分の好きなことに関するテーマを究めていきたいと思いました。

-就活中の企業選びで大切にしていたことと、入社の決め手を教えてください

企業選びをする際、2つの方向性を考えました。1つは学生時代に培った信号処理の知識が生かせるところ。そしてもう1つは趣味である音楽に近しいエンタテインメントの分野です。したがって職種にも、そんなにこだわりはありませんでした。エンタテインメント系では、レコード会社やスポーツイベントなどを開催する施設の運営をする企業の説明会にも行きました。もちろんこれらの企業でも技術系の職種はありますが、企画などの文系職種もいいなと考えていました。とにかく興味があるところは、説明会に行き、面接を受けました。

そうやって2つの方向性で就活をしていた中で、明電舎に決めた理由は次の3つです。
1. 学生時代の専門知識が生かせる
2. 企業規模
3. 人柄の良さ

1番目の専門知識が生かせるというところですが、前述したように私の専門は信号処理です。つまりデータ処理に関する知識があるということ。明電舎は電機メーカーなので、一見、データ処理に関する知識は生かせないようなイメージがあります。しかし私が学生時代に所属していた研究室では、OBにも明電舎の社員がおり、明電舎とつながりがあったため、産業ロボットに画像処理技術を使って部品の位置を特定する仕組みを組み込んでいたり、電車の架線の摩耗具合を画像処理技術によって診断するというシステムを開発していたりすることを知っていたのです。実は今の知能情報研究部には、このような画像処理技術の研究開発に取り組んでいたメンバーも集まっています。画像と音声とではデータの種類は違いますが、データを処理するという知識は生かせると思いました。

2番目に挙げた企業規模とは、明電舎は一部上場の大企業。安定、安心感があります。とはいえ、国内の大手総合電機メーカーと比べると規模が小さい。従業員数は連結でも約8500人。単独だと約3700人です。少数精鋭で取り組むことが多くなるため、若手のうちから責任ある仕事を任されたり、任される仕事の範囲が広くなったりするのではないかと考えたからです。

3番目の人柄の良さは、言葉で伝えるのは難しいですが、大学院の研究室に来た先輩社員をはじめ、面接や説明会で会った人たちの雰囲気が非常に良かったのです。こんな人たちと一緒だと心地よく働けると思いました。

-入社してから感じる明電舎の魅力は?

社会人になったら、平日は趣味のギターを弾く時間は取れないかなと思っていましたが、思っていた以上にワークライフバランスが取れて、働きやすい環境です。水曜日は定時で退社する日と決められており、よほどのことがない限りは定時で退社します。有給も取りやすく、今もバンド活動ができているのは、このような環境のお陰だと思います。仕事もプライベートも毎日が充実しています。

もう一つ、感じている魅力は朗らかな人が多いこと。入社を決めた理由にも挙げた人柄の良さは思った以上でした。
明電舎にはMFC(Meiden Family Chain)というメンター制度があります。入社4年目以降の自分の職場以外の先輩と、入社3年目までの若手が10人ぐらいずつのグループ(ファミリー)をつくることで、成長をサポートしてくれるという仕組みです。毎月1回、ファミリーが集まるイベントが企画されるため、職場の異なる先輩や同僚といろんな話をするのですが、人柄の良さをあらためて実感しています。

-知能情報研究部で必要とされるスキル・知識はありますか?

データを扱うことになるので、統計やデータ処理の知識が必要になります。もちろん、プログラミングが主な業務になるのでプログラミングの知識も。メンバーの多くが情報系の出身です。開発するAIは、当社の製品やサービスに応用されていくものです。したがって、応用される製品やサービスに関する知識も必要になります。この辺りは、各製品やサービスについて詳しい知識を持つ社員に確認しながら勉強していかねばなりません。
このようにこの分野はさまざまな領域の知識が必要になるうえ、技術の変遷も速い。だから常に学ぶ姿勢が求められます。突き詰めて言うと、何事にも好奇心を持って取り組めること。どの仕事にも共通して言えることかも知れませんが、実はこれが一番重要だと思います。あとは、事業部の人たちと話し合って進めることも多いので、自分の意思や考えをきちんと伝達できる力も求められます。

-入社を目指す学生さんへアドバイス

業界や職種を限定せずに、広い視野で企業選びをすることをお勧めします。というのもまったく違うように見える企業でも、自分の興味という視点で捉えたら近しいことがあるからです。今の私にとって音楽とAIはまさにそういう存在です。

もう一つのアドバイスは、神経質になり過ぎないこと。就職は結婚と同様、運命という側面もあります。たとえ希望する企業に振られたとしても、もっと良い企業との出会いのチャンスをもらったというふうに捉えてほしいと思います。

■ 2年前から復活した夏祭り、サッカーの応援も

沼津事業所では2年前より、社員とその家族が参加する夏祭りが復活し、毎年開催しています。
「吉本興業所属の芸人さんが何人か来られて、司会を務めたり、場を盛り上げてくれたりするんです」(吉田さん)
吉田さんも夏祭りのためのバンド「魑魅納涼(ちみのうりょう)」を急きょ、結成し、自作曲を2曲披露したとのこと。写真はその時のひとコマ。お客さまの反応も上々だったそうです。

明電舎はJ3リーグ(日本プロサッカーリーグ3部リーグ)に所属するアスルクラロ沼津のユニホームスポンサーを務めています。同チームのホームスタジアムである愛鷹広域公園多目的競技場(沼津市)に、社員がそろって応援に行くこともあるそうです。

取材・文/中村仁美 撮影/兼岩直紀

<前編>【株式会社明電舎】シゴトバ紹介 | 理系のシゴトバ(就職ジャーナル)

理系のシゴトバ
<前編>【株式会社明電舎】シゴトバ紹介

■ AIの研究開発に取り組む「明電舎」のシゴトバ紹介

-基本情報-
【本社所在地】東京都品川区
【支社・支店】大阪、名古屋、札幌、仙台、大宮(埼玉県)、千葉、横浜、金沢(石川県)、広島、高松(徳島県)、福岡
【事業所・工場・研究所】沼津(静岡県)、総合研究所(東京都品川区)、太田(群馬県)、名古屋
【従業員数】8474名(2017年3月31日現在)
【事業内容】社会システム事業、産業システム事業、エンジニアリング事業を展開。社会システム事業では、変電・配電、発電に関する各種電気機器の製造・販売およびソリューションサービスを提供。産業システム事業では自動車試験装置のほか、電気自動車やエレベーター向けにモーターやインバーターなどの電動力応用製品の製造・販売を展開。エンジニアリング事業では、納入した機器の長寿命化や省エネルギー対策の提案などを行っている。
-明電舎のすごいトコロ-
明電舎は日本の電気技術の黎明期である1901年に三相誘導電動機(モーター)を開発して以来、モートル(モーター)の明電として世の中を支えてきた。モーターおよびその制御技術は、現在の明電舎のさまざまな事業分野の根源として展開されている。例えば、三菱自動車のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」に明電舎のモーターとインバーターが、国内外の有名高層ビルのエレベーター用モーターにも明電舎の製品が数多く使用されている。そのほか、国内新幹線すべての路線のどこかに明電舎の製品が納入されているなど、明電舎の技術は人々の生活に直結するインフラを支えている。
■ 明電舎の会社概要・沿革

生活に欠かせない交通インフラの一つ、鉄道。近年では「電車」と呼ばれるように、今や多くの鉄道が電気を動力として動いています。電車を動かすための電気は発電所でつくられ、変電所で電車用に変圧されます。また、電車が走るための電力を安定的に供給する設備も必要です。このように、電車一つでもさまざまな装置が必要になります。明電舎はこのような鉄道や発電所だけでなく、浄水場、病院、工場、ビル、放送施設など、私たちの日常生活を支える社会インフラ、産業インフラに欠かせない電気機器を開発、提供しているのです。

明電舎の創業は120年前の1897年。創業当初は電気機器の修理、スイッチの製作を主としていました。その後、国内製電動機(モーター)の開発を始め、1905年に同社独自の設計法を考案。その翌年には、同方法を採用したモーターの生産を本格的に開始します(モートルの明電)。ここから同社のモノづくりの歴史が始まります。1970年代からは、パワーエレクトロニクスに注力。さらに1980年代後半からは、これまで培ったエレクトロニクスやメカトロニクスに加え、各分野の技術を統合して管理・監視・制御するまでをソリューションとして提供するシステムエンジニアリングの明電へと発展。そして現在は、豊かな経済社会構築に貢献するため、エネルギー安定供給を目指した高度技術の確立や環境保全技術の発展に積極的に取り組んでいます。

■ 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部のシゴトバ紹介

今回は明電舎 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部のシゴトバを紹介します。
明電舎 研究開発本部 基盤技術研究所のシゴトバは、同社の主力生産拠点である沼津事業所(静岡県沼津市)の中にあります。沼津事業所の最寄り駅は、JR東海道本線沼津駅。そこから車で10分ほど走れば、事業所正門に着きます。同事業所ではスイッチギア、大型変圧器、電力変換装置、可変速装置など、さまざまな同社製品が生産されています。

東京駅から沼津駅までは、新幹線を使うと約1時間半。同社では新幹線通勤も認められており、そういう社員もちらほらいるそう。独身社員の場合は、事業所近くに独身寮があるため、寮から自転車で通勤している人が多いとのことでしたが、大多数の社員は車通勤だそうです。

■ 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部ではどんな仕事をしているの?

同部に所属している吉田健人さんが案内してくれました。

研究開発本部は、吉田さんが所属している基盤技術研究所と、製品技術研究所、知的財産部、開発統括部で構成されています。基盤技術研究所は主に基礎研究、製品技術研究所では製品開発、知的財産部では特許などの知的財産の管理、開発統括部はこれら3組織の取りまとめを担当しています。

「私が所属する知能情報研究部では人工知能(AI)に関する研究開発を行っています」(吉田さん)
知能情報研究部は2016年4月に新設された部署。現在、さまざまな分野にAIが活用されています。同社においても提供するシステムやサービスを高度化、インテリジェント化(機械や道具などにAIを組み込むことで、自動化や高機能化を図ること)するために、本格的にAI研究に乗り出しました。
「例えば水処理プラントの装置に設置されたセンサーから送られてくるデータを解析し、故障予兆を診断したりするAIや、機器の稼働率を最適にし、プラントの運転を効率化するようなAIを開発したりする、ということがあります。私たちが対象とするのは、あらゆる事業部の製品やサービス。これまでのやり方ではできなかったことを、AIで解決していこうというのが私たちの部署のミッションです」(吉田さん)
新設されたばかりなので、まだまだ組織は小さく、部員は10人強。平均年齢は30歳と、全社の平均年齢と比べて10歳以上も若く、若手社員の活躍が期待されています。

■ 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部 吉田健人さんのおシゴト紹介

吉田さんは現在入社3年目。入社後1年間は製品技術研究所に所属し、産業用コントローラーの開発に携わっていました。同部の新設と同時に現在の部署に異動。その背景には、学生時代に音声データを扱う研究をしていたことがあったからだと言います。
「現在、AI技術の中でも最もホットなのは、ディープラーニングという技術です。これは機械学習というデータ分析手法のアルゴリズムの1つで、それを事業部のニーズに合わせて設計するのが私たちの仕事です」(吉田さん)
ディープラーニングの設計といっても、ディープラーニングそのもののプログラムを開発するわけではありません。現在、海外の先進的なIT企業をはじめ、国内IT企業でも、ディープラーニングを実現するためのフレームワーク(プログラムのひな型)を無償(オープンソース)で提供しています。例えば、ある機械の故障を予測するようなAIを開発する場合、それができるように設計し、プログラムをカスタマイズしていきます。

AIの開発において、必要になるのがデータです。同社の場合は、製品のインテリジェント化を図るAIを開発しているため、対象となる装置に設置されたセンサーからデータを取得することも重要な業務の1つです。例えばモーターが故障すると、モーターの軸のぶれや振動が生じます。そこで、モーターの故障を予測・判定するようなAIを開発するために、実際にモーターを回転させてどのような動きをするか、データを取得するのです。

上の写真は、軸の振動や位置などを測定するため、センサーを設置しているところ。こうして大量に取得したデータを、AIプログラムに学習させていくのです。そして目的通りの成果が得られるか、AIプログラムを実際の装置に組み込み、試験を行い、評価します。目的通りの成果が得られなければ、また設計を見直したり、プログラムをチューニングしたりして、試験を繰り返していきます。

「AIは今、話題の最先端分野であり、当社では私たちがパイオニア的な存在です。そういうチャレンジングな分野を私たち若手が任されているんだというところに、大きなやりがいを感じています」(吉田さん)

今、実用化を目指して吉田さんが取り組んでいるのが、ディープラーニングの基礎技術であるニューラルネットワークのハードウェア化です。
「AIの研究開発については、事業部の製品開発担当者や企画担当者と話をして、進めています。また最先端な分野だけに、大学との共同研究も行っています」(吉田さん)

前編では【明電舎 研究開発本部 基盤技術研究所 知能情報研究部】のシゴトバを紹介しました。
後編では吉田さんに入社の決め手やシゴトバの魅力、これから就活を迎える学生さんへのアドバイスなど、お話しいただきます。

→次回へ続く

(後編 10月11日更新予定)

取材・文/中村仁美 撮影/兼岩直紀

<後編>株式会社コングレ | ビジネスパーソン研究FILE(就職ジャーナル)

ビジネスパーソン研究FILE
<後編>株式会社コングレ

今回の取材先 株式会社コングレ
事業内容:コンベンション(大型国際会議・学術会議等)・展示会・企業イベント(IR・年次総会等)・国際イベント(万博・スポーツイベント等)の企画運営から、MICE(※)施設の経営、MICE施設開業のコンサルティングまで幅広く展開。その他、各種調査、会議・展示・文化施設の指定管理者業務、観光文化施設運営(水族館、科学館、展望台等)、通訳・翻訳、人材サービスなども行っている。

※MICE=「Meeting」:企業主催のミーティング・セミナー、「Incentive tour (travel)」:報奨旅行・研修旅行、「Convention」:国際会議・学術会議、「Exhibition/Event」:展示会・イベントの頭文字を取った造語。

前編では、入社5年目の佐藤雄太(さとう・ゆうた)さんに、新人時代についてお話をうかがいました。後編では、これまでのキャリアの中で印象に残っていること、1日のスケジュールについて紹介します。

■ 印象に残っている仕事とコングレで働く魅力

-担当してきた仕事で印象に残っていることを教えてください

入社3年目の2015年から施設・人材サービス事業本部に異動し、集客施設や会議施設の運営を担当。念願だった現場に近い仕事に就くことができ、胸が高鳴りました。いくつかのプロジェクトに携わった後、六本木で開業する「スヌーピーミュージアム」を担当させていただくことに。

最初の関門は、運営権獲得コンペのための企画書づくりです。まだ建設も完了していない施設なので情報も手探りの状態でしたが、施設の特徴や運営上の留意点、そして当社のアピールポイントを記載し、企画書をまとめました。その際、コングレならこれができるという「夢」はもちろんですが、同時にコスト面などの「現実」も把握している必要があります。企画書には当社のこれまでの施設運営ノウハウが総動員されているので、見ているだけでも新しい発見があり、勉強になりました。
10月にプレゼンを行い、提案が通った11月からは、運営準備に着手しました。当初のメンバーは3名。組織づくりをゼロから始めることに不安はありましたが、メンバーの得意分野を把握して、任せていくことにしました。

翌年2月にスタッフ募集を行い、700名と面接して120名のスタッフを採用。3月には運営マニュアルを作成して、スタッフ研修を実施。同時進行で施設内備品の準備やルール整理、日々の業務の設計を行いました。4月初旬からは完成した施設を見ながら想定されるケースの対応策を準備し、2016年の4月23日にオープンを迎えました。

当日は、予想以上の大盛況でした。オープニング業務は、実際にお客さまが来場しないとわからないことも多く、準備は万全を期したつもりでしたが、現実は想定外のことだらけ。「次々発生する課題に対処しているうちに、終わった」というのが正直な感想です。嵐に巻き込まれたかのようで、息をつく暇もありませんでした。ご来場者数がピークとなる5月の連休を乗り切って、ようやく成功の喜びをかみしめました。

-今後の目標を教えてください

今では、ミュージアムの混雑具合を見れば、売り上げや利益が大まかに予測できるようになり、新たな面白さを感じています。施設運営の責任者として、入場者やショップの売り上げに貢献するのはもちろんですが、安全性と楽しさを両立させていくのが目標です。

また、先日ミュージアムで開催されたTシャツづくりのワークショップがとても好評でした。Tシャツプリントのメーカーとのつながりもできましたし、予想以上に好評だったので、同様の試みは他の施設でも展開できるのではと考えています。このように、現場でお客さまと近い距離にいるからこそ生まれるアイデアを、コングレの新たなビジネスに結び付けていくことにも注力していきたいですね。

-働いてみて感じるコングレの魅力を教えてください

社員が考えた提案を許容してくれる懐の深さがあり、現場に裁量を与えてくれるので、さまざまなことにチャレンジできます。例えば、スヌーピーミュージアムのスタッフ採用の際、私は「旧来の履歴書持参方式では他のアルバイト先との人材獲得競争に負けてしまうので、Webでエントリーさせたい」と考え、スヌーピーミュージアム単体のWebエントリーフォームをつくることを上司に提案。新しい試みでしたが、エクセルで作成したフォーム見本と見積書を添えて説得することで社内承認を得て、迅速に想定どおりの人数を採用できました。

-学生へのメッセージをお願いします

情報はたくさんあったほうがいいと思いますし、いろいろな情報ソースから集めることをオススメします。例えば、自分が関心を持っている業界の専門誌を読んだり、『日経新聞』だけでなく、『日刊工業新聞』などの業界新聞を読んだりしてみると、B to B分野で伸びている会社の情報が見つかるかもしれませんよ。ニッチな業界なら、業界団体の加盟社一覧で社名をあたって比較検討するのも1つの方法です。

■ 1日のスケジュール

8:30 起床。
10:00 スヌーピーミュージアムに出勤。事務所のデスクで、クライアントへの請求、スタッフ労務、運営面の改善業務などを行う。
12:00 ミュージアム内で、お客さま誘導や人員の配置変更などの現場対応にあたる。
13:00 ランチ。近所のレストランに行くか、買ってきたお弁当を事務所で食べる。
15:00 同じ事務所内に常駐しているクライアントと情報共有ミーティング。
16:00 クライアントと、次回のワークショップ企画についてミーティング。
20:00 退勤。帰宅後は、読書をすることが多い。最近読んだのは田中角栄に関する本。
 

■ プライベート

趣味はオフロードバイク。社会人になって購入したバイクで、千葉や茨城などのコースに向かう。ミュージアム勤務は、シフトによる週休2日制なので、平日の休みに一人で練習に出かけることもある。

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

<後編>高橋智隆 | 仕事とは?(就職ジャーナル)

仕事とは?
<後編>高橋智隆

たかはし・ともたか●1975年、京都府生まれ。1998年立命館大学産業社会学部卒業。2003年京都大学工学部卒業と同時に株式会社ロボ・ガレージを創業し、京都大学内入居べンチャー第1号となる。代表作にロボット宇宙飛行士「キロボ」、ロボットスマホ「ロボホン」、雑誌の付録のパーツを集めてロボットを作るデアゴスティーニ『週刊 ロビ』、グランドキャニオン登頂「エボルタ」など。ロボカップ世界大会5年連続優勝。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定されている。東京大学先端科学技術研究センター特任准教授、大阪電気通信大学総合情報学部情報学科客員教授、ヒューマンアカデミーロボット教室顧問、主に釣り用品を製造・販売するグローブライド株式会社社外取締役などを兼任。

前編では高橋さんがどのような思いや考え方でロボットを作っているのかをお話しいただきました。
後編ではロボットを仕事にするまでの経緯や、好きなことを仕事にして生きて行くために大切なことをうかがいます。

■ 就職活動の失敗が転機となり、ロボット作りの道へ

-幼稚園のころから「ロボット科学者」になりたかったとおっしゃっていましたが、「ロボットひと筋」ではなかったそうですね。

ものを作るのはずっと好きでしたが、インドア派というわけではありませんでした。学校はやったことはひと通りやって、小学校高学年以降は釣りにはまりました。高校卒業後は付属の大学の文系学部に進みましたが、特に学びたいことがあったのではなく、なんとなくラクそうな学部だからと選んだのが正直なところです。バブル景気の中、大学入学後はスキーに釣り、1年間の海外留学と気ままな学生生活を送り、就職も何とかなるだろうとたかをくくっていました。

ところが、大学在学中にバブルが崩壊。企業からの内定取り消しに泣く先輩たちの姿を目の前にしてようやく将来について考え、「もの作りを仕事にしたい」と思いました。社会の厳しさを感じたからこそ、好きなことと仕事を一致させないとやっていけないと考えたんです。そこで、釣り具メーカーの開発職を希望して就職活動を開始。第1志望の会社の最終面接まで進んで「絶対受かる」と思っていたのに、結果は不採用でした。内定を頂いた会社もありましたが、就職活動の過程で「もの作りをしたいなら、工学部に進めばよかった」と後悔していたことから、予備校に通って1年間勉強。京都大学の工学部に入り直し、子どものころ憧れたロボットの道に進むことにしました。

-「ロボットの道」とは?

大学ではロボット関連の研究室に進みましたが、ロボットの「作り方」を教えてくれるわけではありませんでした。そもそもロボットに適した構造や材料なんて誰にもわかりませんから、参考になりそうな科目を履修しながら、自宅でロボットを作っていました。最初に作ったのは、ガンダムのプラモデルの足の裏に電磁石を仕込んだ二足歩行ロボット。予想以上にうまく動き、大学を通して特許を取得して、商品化もされました。

在学中は新しいロボットを作っては展示会やコンテストにも参加しました。今度こそ希望通りの就職をしたかったので、「うちの会社に来ないか」と言ってもらうために業界に名前を売ろうともくろんだんです。起業しようとは考えていませんでした。でも、当時はちょうど大学発のベンチャーを支援する機運が高まっていて、京大にもベンチャーインキュベーション(起業家の育成や新しいビジネスを支援する施設)を作ってもらえることになりまして…。その入居第1号として声をかけてもらい、「うまくいかなかったら、就職しよう」という軽い気持ちで「ロボ・ガレージ」を設立。社会人としてスタートを切りました。実績のないベンチャーにとって京大内に事務所を構えることの恩恵は大きく、本当にありがたかったです。
 

■ 「ユニーク」であることが大切

-自分の好きなことを仕事にしたいと望む人はたくさんいますが、好きなことと仕事を一致させるには何が大事だとお考えになりますか?

「ユニーク」であることだと思います。僕は大学在学中から「ロボットクリエイター」という肩書で活動していますが、これは僕が勝手に作った言葉。ロボットの企画・設計から製作、発表まで一貫してやる職業を表現しました。つまり、そのような既存の職業が見当たらなかったということです。好きなものがあってその世界で生きていきたいと思っても、すでにたくさんの人がやっていることで生き残るのは至難の業。自分がやろうとしていることにどれだけオリジナリティがあるのかは見極めた方がいいと思います。

逆に言えば、オリジナリティさえあれば、新しい市場をつくり出せる可能性があります。そのオリジナリティの根源はやはり「好きなことにこだわる」ということに尽きるでしょうね。僕もそうでしたし、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズしかり。そして、自分に本当にオリジナリティがあるのかどうかは、世界を見なければ判断できません。社会に出て、会社なり、業界なりあるグループに属してしまうと、どうしても「井の中のかわず」になりがち。自由にものを見て、考えることができる学生時代のうちに、旅をしたり、さまざまな人に出会ったりして、世の中の広さを知ることが大切だと思います。

■ 学生へのメッセージ

僕は就職活動で第1志望の釣り具メーカーに入ることができませんでしたが、2015年からその会社の社外取締役をやっています。ロボットクリエイターとしてのこれまでをメディアに取材された記事を見て、オファーをしてくれたそうです。大学生活を2度送るという「回り道」もしましたが、その時々で自分が「面白そう」と感じる道を選んだ結果ですし、最終的には帳尻も合っています。ただ、「回り道のススメ」のようなことを言うつもりはありません。学生時代にもう少しきちんと将来のイメージを描き、就職活動というものがどういうものかを知っていれば、抱えずに済んだリスクもあったはず。僕自身の反省から、後悔のない就職活動をするには、戦略を立てて動くことをお勧めします。

■ 高橋さんにとって仕事とは?

-その1 新しいものが求められる世界で、平均的なものを作っても意味がない

-その2 いいものを作るのはもちろん、作ったものをどう世の中に広めるかを考える

-その3 好きなことで生きていきたいなら、オリジナリティを極めることが大切

■ INFORMATION

2013年に初版を創刊後、第3版まで版を重ね、約15万台を世に送り出した「ロビ」を進化させ、さまざまな機能を搭載した新しい「ロビ」が完成するのが、『週刊 ロビ2』。2017年6月創刊・全80号で、「ロビ」をサポートするロボット「Q-bo(キューボ)」も完成する。ドライバー1本で初心者の方でも安心して組み立てることができ、組み立てが不安な方には「組み立てサービス(有料)」が用意されている。

『ロビ2』特設ホームページ https://deagostini.jp/rot/

■ 編集後記

高橋さんは子どもを対象としたロボット教室の監修・アドバイザーも務めています。教室は全国に1000拠点以上あり、小学生を中心に1万5000人を超える生徒がいるそうです。ロボット教育で高橋さんが大切にしているのは、「ロボットを作りたい」という子どもたちの思いを真っすぐ伸ばすことだそうです。「大人はロボットの作り方を系統立てて教えがちですが、それでは子どもは面白くなくて、ロボットを作りたいと思えなくなってしまう。一番楽しそうな部分から組み立て始めるなど、子どもがロボットに愛着を持てるようカリキュラムを工夫しています。アイデアコンテストの全国大会も開催していて、『これは僕も負けられない』と思うようなアイデアを持った子に出会えたりもするんですよ」とうれしそうな高橋さん。ロボット普及への思いが伝わってきました。(編集担当I)

取材・文/泉 彩子 撮影/刑部友康

<前編>株式会社コングレ | ビジネスパーソン研究FILE(就職ジャーナル)

ビジネスパーソン研究FILE
<前編>株式会社コングレ

今回の取材先 株式会社コングレ
事業内容:コンベンション(大型国際会議・学術会議等)・展示会・企業イベント(IR・年次総会等)・国際イベント(万博・スポーツイベント等)の企画運営から、MICE(※)施設の経営、MICE施設開業のコンサルティングまで幅広く展開。その他、各種調査、会議・展示・文化施設の指定管理者業務、観光文化施設運営(水族館、科学館、展望台等)、通訳・翻訳、人材サービスなども行っている。※MICE=「Meeting」:企業主催のミーティング・セミナー、「Incentive tour (travel)」:報奨旅行・研修旅行、「Convention」:国際会議・学術会議、「Exhibition/Event」:展示会・イベントの頭文字を取った造語。
2013年にコングレに入社した佐藤雄太(さとう・ゆうた)さんに、これまでのキャリアと仕事の醍醐味(だいごみ)をうかがいました。前編では、新人時代のお話を紹介します。

■ キャリアステップ (部署名は所属当時のもの)

2013年 京都大学文学部社会学専修 卒業
2013年 営業企画本部:4月に入社後、新規施策全般を行う部署で、PPP/PFI(公民連携)での新設の会議施設に関する営業とコンサルティング業務に携わる(入社1年目)
2015年 施設・人材サービス事業本部:集客施設や会議施設の運営を行う部署で、新規施設の立ち上げ業務を経験。現在はキャストマネージャーとして、東京・六本木のスヌーピーミュージアムの現場運営に従事(入社3年目~現在)
■ 就職活動の時の思い・新人時代のエピソード

-入社のきっかけを教えてください

大学で学園祭実行委員を経験し、人の集まる場所づくりやイベント運営の面白さに目覚めました。人にモノを届けるために欠かせないマーケティングリサーチにも興味があったので、イベント系企業とマーケティングリサーチの専門会社に絞って、5社の選考に進みました。企業研究をしていく中で、業界では新しい取り組みであったコンベンション施設の自社経営を行うなど、コングレの先駆的な事業方針に着目。「新しいことにチャレンジするこの企業なら、自分の力を生かせる場面がある」と思い、入社を決めました。

-入社後はどのように仕事を覚えていったのですか?

内定者だった2012年に東京で開催された、「国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会」の運営をコングレが受託していたことから、同期4名とサポートに入ることになりました。会議場でのペン・メモ帳のセッティングや事務局の準備など、シンプルな作業ではありましたが、188カ国の財務大臣・中央銀行総裁をはじめ、政府幹部・金融関係者・メディアなど1万人以上が参加する国際会議を、全社を挙げて運営している現場を入社前に体験し、国際会議運営の空気を感じることができました。

入社後に配属となった営業企画本部は、会議施設を造る地方自治体や企業を対象に、施設設計や運営のコンサルティングを請け負うのが主な仕事。先輩はベテランぞろいだったので、いい意味での緊張感がありました。経験豊富な先輩たちの体験やノウハウを聞く機会に恵まれ、とても勉強になりました。

-新人時代に印象に残っているエピソードを教えてください

ある地方自治体が所有する施設の運営権獲得のコンペに参加するため、施設部門だけでなく、コンベンション部門、調査部門などさまざまな部署からのメンバーで構成されるチームで、1カ月半ほどかけて提案書を作成することになりました。私が担当したのは、提案書の資料集め。類似施設のスペックなどのリサーチや、上司が作成した文書をパワーポイントで整える業務に当たりました。

印象に残っているのは、提案書に記載する情報を精査していく過程で、私が不要だと思って削った部分について、上司から「削った部分を生かして、別の部分を削除するように」と指示されたこと。私なりに考えたつもりでしたが、上司との視点の違いを痛感しました。この一件で、「どのポイントを大事にして訴求すれば相手に響くのか」を見極めることの重要性を学びました。

提案は惜しくも通りませんでしたが、チーム内で出てくるさまざまな意見をひとつの方向にまとめていく難しさや、完成した時の達成感を分かち合うことができましたし、「自分の力が多少なりともプラスになった」という手応えも実感できました。

■ 仕事中の1コマ

現在は六本木にあるスヌーピーミュージアムの現場運営とスタッフオペレーションをメインに、東京本社での会議に定期的に出席するなど、多忙ながらも充実した日々を送っている。

→次回へ続く

(後編 10月6日更新予定)

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康